父、帰る


 2010.3.9  無口な父親の思い 【父、帰る】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
何の変哲もない、ごく普通な家庭。ただ、そこには父親がいなかった。突然12年ぶりに帰ってきた父親に戸惑う子供たち。小旅行にでかける風景は、なんだか父親と子供たちとのぎこちない関係を現しているかのように、奇妙な雰囲気となっている。最初はこの無口な父親は、口うるさく言わない代わりに、態度で示す良い父親のような印象があった。それが、説明もなしに次々と予定を変える父親に不満を持つ子供たちと同じように、観衆も父親の本心がわからなくなってくる。のどかでのんびり釣りかと思えば、サバイバルに無人島にまで行ったりもする。父親の存在というのが二人の兄弟にどのような影響を与えるのか。兄は”パパ”と気安くよぶが、弟は”パパ”と呼べない。なんだか、奇妙で悲しくなる作品だ。

■ストーリー

突然帰って来た父に戸惑う家族の葛藤と絆をサスペンスフルなストーリー展開と共に描いた家族ドラマ。無口な父は、ふたりの兄弟を小旅行に誘うが…。

■感想
物言わず、態度で示す父親。息子たちがカツアゲされても、見て見ぬふりをし、最後に自分の行動で示す。はっきりと目的を言わず、命令だけする父親。最初は、無口だが、頼りがいのある頼もしい父親というイメージを刷り込んでいる。無人島に向かう準備をテキパキとこなす父親。命令口調だが、頼りがいがあり、何か問題があっても解決してくれそうな逞しさを感じた。父親はこの小旅行で一体何をしたかったのか?12年ぶりに帰ってきた意味は?それらは一切作中では描かれていない。そのため、ただ想像するだけしかない。父親の本心が何なのかを。

無口ゆえに横暴と思われがちな父親。そのため、最初から反発的であった弟が、何かにつけて反抗してくる。弟の反抗に対して父親は、有無を言わさぬ迫力で追い詰める。釣りがしたいとわめけば、橋の上に置き去りにし、釣りに熱中して約束の時間を守れなければ、容赦ない鉄拳制裁がまっている。兄弟が感じる想いというのは、もしかしたら誰もが感じることなのだろう。無口で、子供たちに本心がなかなか伝えられない父親は、観衆にさえもその思いを伝えることができない。

本作の謎として残っているのは、父親が無人島で掘り出した謎の小箱だ。この小箱が、兄弟たちに対する愛情を表現する何かであってほしかったが、結局最後までその中身はわからずじまいだ。父親が12年間も家に帰らなかった理由や、小旅行のついでにやる仕事なども一切謎だ。謎を謎のまま残し、父親と兄弟の関係は結局心通わせることのないまま終わっている。なんだか最後は切ないような、よくわからない気持ちになった。父親がもっとストレートに自分の気持ちを態度に現すか、もしくわ、小箱の中に決定的な何かがあるか、そうでなければただの無口な親父で終わってしまう。

もしかしたら、見る人の親子関係によって、とらえ方も変わってくるかもしれない。



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