ゼア・ウィル・ビー・ブラッド


 2008.10.30  ある男の強欲と執念 【ゼア・ウィル・ビー・ブラッド】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
一攫千金を目指し、一人の男が石油を掘り、石油王になるまでを描く本作。強烈なまでの向上心を持ち、誰にも負けまいとひた走るダニエル。その強欲ぶりと、他者を寄せ付けない圧倒的な存在感は強烈なのだが、特別悪人だとは思わなかった。それなりに仁義を通しているし、話すことも間違いではない。町に富をもたらし、仲間に仕事を与え、商売を成功させ、地位と名誉を手にいれている。突発的な成金であれば、嫌悪感を抱くのだろうが、ダニエルが必死になって石油を採掘しようとする姿を見ている観衆には、それほど悪い印象をもたれないのではないかと思った。ストーリー的にはなんてことのない話なのかもしれないが、演出がすばらしいために、終始目を離すことができなかった。

■ストーリー

20世紀初頭のアメリカ―。一攫千金を夢みるダニエル・プレインヴュー(ダニエル・デイ=ルイス)は、山師として鉱山の採掘を行っていた。野心家の彼は、交渉の場にいつも相手の警戒心を解くために、幼い息子H・W(ディロン・フレイジャー)を連れていた。ある日、ある青年から故郷の広大な土地に石油が眠っていると言う情報を得た彼は、西部の小さな町リトル・ボストンへおもむく。作物も育たない見渡す限りの荒野のこの寂れた町で、プレインヴューは次々に安価に土地を買い占めていった。そして、その地で見事に石油を掘り当て、莫大な財産を手中に収め、辺境の地に繁栄をもたらすのだが…。

■感想
物語としては単調なようだが、実はいろいろと謎に満ちている。息子との関係や、仕事仲間との関係、土地を奪い取った形になったサンデー一家や、そこでカリスマ宗教家となった男、そして、弟と名乗った男など、さまざまな要素に満ち溢れているが、根本的にはダニエルの独り舞台となっている。ここで、何か大きな出来事があり、物語に起伏を持たせるのかと思いきや、意外なほどあっさりと通りすぎてしまう。結局何が言いたかったのか、ダニエルの独り舞台を見せられ、それに目が釘付けになってしまうので、説明に困る作品かもしれない。概要だけを話すと、まったくその魅力を表現できないから困る。

本作のメインでもある石油採掘の場面では、音楽がとても効果的に使われている。広大な台地に、やぐらが燃え盛る場面。そこに必死に走りよるダニエル。独特な音楽がダニエルの必死さと、事態の深刻さを表現しながら、石油採掘の苦労を表現している。特に印象的だったのは、燃えさかるやぐらをダイナマイトで吹き飛ばす場面だ。ダニエルを中心として、両脇からダイナマイトをぶっ放し、炎を一瞬にして消し飛ばす。ダニエルの苦労が報われる場面でもあり、そこから成功をつかむという執念を感じさせる場面でもある。

ラストには晩年のダニエルと息子とが対峙する場面もあり、ずいぶんと冗長に感じられた。最後の後始末というべき場面が目白押しだが、ピークは過ぎている。石油採掘に対する執念を見せ、パイプラインを引くまでが本作の全てなのだろう。金持ちとなり、豪華な部屋に住みながらも強欲さを見せる場面が、最後にダニエルを悪者にしたような気がする。そこさえなければ、ダニエルはただ、必死に成功しようとした一人の男として終わっていたのだろう。

ダニエルの迫力と、演出のすばらしさから、一つの場面がまるで絵画のように止まった映像として覚えている。広大な台地にポツンと存在するやぐらもやけに印象的だった。



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