ザ・マジックアワー


 2009.11.12  デラ富樫が面白すぎる! 【ザ・マジックアワー】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
一瞬、劇中劇かと思った。明らかにセットとわかるような町並み、街を牛耳るボスとの対面の場面が、まるで劇中劇のように感じられた。しかし、それがそのまま本編であるということにも驚かされた。あえてセットだとわかるように作ったのだろうか。俳優たちのちょっと大げさな演技も、どこか舞台的な印象を持った。リアリティがまったくない時代設定のせいもあるが、すべてが映画の中で映画作品を撮っているような気がしてならなかった。作り物の世界で、すべてを笑いに包もうとする。このよくわからない時代設定が、デラ富樫に扮した村田とボスたちのやりとりの面白さを強調しているのだろう。中盤までは上質なコメディとして十分楽しめた。ラストがいまいち釈然としないが、面白いことは確かだ。

■ストーリー

「命が惜しければ、五日以内に幻の殺し屋“テ゛ラ富樫”を見つけて来い!」街を牛耳るホ゛ス・天塩(西田敏行)の愛人・マリ(深津絵里)に手を出してしまった手下の備後(妻夫木聡)。命の代償に伝説の殺し屋“テ゛ラ富樫”を連れて来ると誓うが、期日が迫ってもテ゛ラは見つからない。窮地に陥った備後が取った苦肉の策は、無名の俳優村田大樹(佐藤浩市)を雇って、殺し屋に仕立てあげることだった。

■感想
ハリボテのようなセットと、ギャグとしか思えない時代設定。そして、殺し屋を演じながら、ボスと相対するデラ冨樫。はっきりいえば、ボスたちとデラ冨樫のやりとりが強烈に面白い。特にボスの側近である黒田とデラ冨樫のコメディとしか思えない掛け合い。両者とも真剣で、お互いがお互いを誤解しながら、巧妙なセリフ運びで事態は偶然にもとんとん拍子に良い方向へと進んでいく。お互いが勘違いしたまま物語がすすでいくという手法でここまで面白くできるのも、脚本のすばらしさゆえだろう。どこかハラハラしながらも、思わず笑ってしまった。

かと思えば、マリと備後のよくわからない恋愛模様。この設定がいるのかどうか、マリの存在もいまいち曖昧だったが、デラ冨樫の強烈なキャラクターの前にすべてがかすんでしまったと言ってもよいのだろう。ちょこちょこと豪華な出演陣を使いながら、贅沢な作品という印象をあたえている。しかし、セットはあえてリアリティをなくし、どこかで劇中劇なのだと錯覚させようとしている。真剣に考えれば、不自然以外のなにものでもない。ありえない展開が、そのまま、まかり通るのは不自然でリアリティのない設定やセットのおかげなのかもしれない。

中盤までは、まさに笑いが絶えないすばらしいコメディ作品となっている。それが、デラ冨樫の正体がばれてきたあたりから、とたんに面白さが半減した。やはり本作の面白さは映画作品と思い込みながら、本物のマフィアと対等にわたりあう村田の姿だということだ。全てを理解してなお、デラ冨樫を演じようとする村田には、なんの面白さも感じることはなかった。そして、ちょこちょことアクセントとして登場する村田のマネージャーも、最後にはその役割を放棄したような感じだった。どうにも、ラストがもったいないような気がした。

中盤まではまさにコメディの王道と言っても良いだろう。中盤までは笑いの絶えない作品だ。



おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
pakusaou*yahoo.co.jp