天然コケッコー


 2010.8.5  天然記念物モノのピュアさ 【天然コケッコー】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
住んでいたのはここまで田舎ではなかったが、なぜか懐かしい気がした。廃校寸前の分校で学校生活をおくる素朴な少年少女。そこに突如として入り込む都会から来たイケメン。このイケメンが田舎を馬鹿にした嫌な奴ではなく、中学生らしい純粋さを持ちあわせていたのがよかった。そよのピュアな感じと、恋愛がよくわからずにキスを握手と変わらないと思う姿。なんだか、田舎の良さばかりが目に付いた。ただ、冷静に考えると環境の不便さが隠されているが、それを多い尽くすほどのピュアな心が溢れている。普通の恋愛映画にはない、純粋なドキドキ感。付き合うといっても何をするのでもなく、ただバレンタインデーにチョコを優先的に渡せるというだけだ。このピュアさにやられてしまった。

■ストーリー

見渡す限り山と田んぼが広がる木村町。全校生徒合わせてわずか6人しかいない山の分校にやってきた都会の転校生と、素朴な町の少女の淡い思いを描いた物語。――そよの暮らす田舎町に、東京から転校生がやってきた。そよは、彼に興味深々で……。

■感想
この手の田舎生活モノは、下手したら退屈で眠たくなってしまう危険性がある。特別大きな事件や事故が起こるわけでもなく、淡々と過ごす学生生活。退屈そうに感じるかもしれないが、物語は絶妙なメリハリが利いているので決して退屈することはない。そよの揺れ動く心や、田舎生活独特の町中が知り合いのような感覚。そよの純粋さゆえに生じるちょっとした問題を見ていると目が離せない。これは脚本がすばらしいのと、なんといっても演じる俳優がすばらしことがすべてだろう。

イケメン中学生の大沢も、変にひねくれたことがなく、そよと気軽に手をつないだりもする。この年代独特の、女を変に意識しすぎて避けるということがない。まだ愛や恋とまではいかなくとも、そこには何か感じるものがあるのだろう。自分たちより年下の子供たちの面倒をみながら、日々の生活を続ける。東京から田舎町へ引っ越したとしたら、変なプライドやこだわりがでてくるように思えるが、大沢にはそんなことがなかった。そよも大沢もこの純粋さがあってこそ、物語が綺麗で純粋なものになっている。大沢のぶっきらぼうの中にある優しさもよかった。

ある程度田舎で生活したことがある人ならば、懐かしさを感じることだろう。都会に住んでいるとその便利さばかりが目に付くが、田舎のスローライフも魅力的だと思わせる作品だ。いまや都会では絶滅種となった、お下げ髪とひざ下スカート。穢れを知らない純粋なその視線に見つめられると、自分の汚れ具合が浮き出そうで怖くなる。そよのような女の子はこのまま都会にでることなく、田舎で純粋にピュアなまま育ってほしいとしみじみ思ってしまった。ちょうど父親が娘にいだく感情のようでもあり、田舎に残した彼女に思う感情でもある。

エンドロールはまったく泣けるシーンではないはずなのに、涙が出そうになった。



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