天国の青い蝶


 2009.11.5  末期がんも根治する体験 【天国の青い蝶】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
末期のがん患者が、目標を見つけ何かに没頭したとき、癌が完治するというのはよく聞く話だ。本作はすべて実話で、その手の類の話に違いはない。しかし、登場人物たちがお決まりの偽善者ぶった言動ばかりでなく、しっかりと不平不満も口にしているのはよかった。誰が好き好んで車椅子の少年とジャングルで青い蝶を探さなければならないのか。昆虫学者も最初はあからさまに嫌な顔をしていた。母親であっても息子の夢を叶えたいと思いつつも、ジャングルの沼地に嫌気がさし、ぼやく。真実の人間の姿を描きつつ、感動を誘っている。涙を流すとまではいかないが、車椅子の少年が必死で頑張る姿を見ると、たとえ演出だとわかっていても感動せずにはいられない。

■ストーリー

末期の脳腫瘍に冒された少年の夢は、世界でいちばん美しい青い蝶ブルーモルフォに触れること。彼の夢をかなえようと、母は有名な昆虫学者に、息子の夢をかなえてほしいと頼む。そしてブルーフォルモは生息する中南米に旅立った彼らが、そこで見たものは…。

■感想
世界で一番美しいといわれる青い蝶。その蝶を探しに、脳腫瘍で余命わずかな少年が中南米のジャングルへと旅立つ。どんなにジャングルになれた昆虫学者だといっても、車椅子の少年とジャングルを旅するのはいやなのだろう。現地の人々も、車椅子の少年がやってきたとき、どんな思いでいただろうか。前半だけ見ると、いくら末期がんだとはいえ、わがままな子供が、むちゃな要求を突きつけているとしか思えなかった。皆におんぶされ、車椅子を担いで運んでもらいながらのジャングル探検。その姿は、ただ金の力で現地人を召使のように扱っている風にも見えてしまった。

少年の思いが観衆に伝わってくるのは後半になってからだ。腰まであるような沼地に入り込み進むしかないジャングルの奥地。母親はそんな環境に嫌気が差しながらも、息子のためと思い我慢する。現地人たちは、なれているとはいえ、車椅子を担ぎながらの道中はつらい。体が弱りきって、吐きながらも青い蝶を探すということを諦めない少年。前半までは病気の描写がまったくなかったため、ただのわがまま坊ちゃんに見えていたが、後半からは一気に見方が変わってきた。少年が辛くないはずはないのだ。一番体的に辛いのはまぎれもなく少年のはずだからだ。

後半からは、一気にたくましくなる少年。末期がんをも克服するほどの強烈な体験をしたのだろう。すべてが実話だといわれても、まったくうそ臭さを感じない。車椅子でしか移動できなかった少年が、命の危険を感じると少しずつ歩き出す。人は窮地に追い込まれると、とんでもない力をはっきするのだろう。少年の執念というか、熱い思いはすべての病巣を死滅させるほどの自己治癒力があったのだろう。本作を見て、もし同じように末期がんに苦しんでいる人がいたら、ほんのわずかだが勇気がわくかもしれない。全ての人がこの少年のようになれるわけではないが、何かに必死に打ち込むというのは、大事なことなのだろう。

最初はくだらない、ありきたりな作品かと思ったが、意外な感動があった。



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