タロットカード殺人事件


 2009.3.23  ウディ・アレンの作品だ 【タロットカード殺人事件】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
これはまさしくウディ・アレンの映画だ。ミステリーというふれこみだが、はっきり言えばそんなことはどうでもいい。ウディ・アレン扮するシドとスカーレット・ヨハンソン扮するサンドラ。この二人がおりなす軽快なやりとりは見ていてとても心地よかった。三流マジシャンとしてとぼけた顔をしながらも、セレブたちを手玉にとったり、危ないところでは得意の屁理屈で相手を煙に巻いたり。セレブのピーターや、周りの人物が絵に描いたような上流階級だけに、シドとサンドラのドタバタ感がまたより際立っている。ミステリーとしてのオチや謎なんてどうでもよい。最後の最後、クライマックスでのシドはまさに本作を象徴しているだろう。面白すぎてしょうがなかった。

■ストーリー

三流マジシャン、シド(ウディ・アレン)のショーで“チャイニーズ・ボックス”に入った女子大生サンドラ(スカーレット・ヨハンソン)は、幽霊となった新聞記者(イアン・マクシェーン)から世紀のスクープを耳打ちされる。それは、ロンドンを恐怖で揺るがす<タロットカード殺人事件>の犯人の名前―。証拠を掴むため、父娘と偽ってシドと、ピーター(ヒュー・ジャックマン)に接近を試みたサンドラだが、洗練された英国貴族の彼にたちまち心を奪われてしまう。恋に落ちたサンドラは、もはやピーターを疑惑の目で見ることができない。しかし、そんなある夜・・・。

■感想
セレブお坊ちゃま役のヒュー・ジャックマン。まさに非の打ち所のないイケメンだ。いかにも何か裏がありそうな雰囲気を漂わせながら、ミステリーとして物語は進んでいく。正直言うと、ミステリー部分はどうでもよい。割りとどこにでもある、ありきたりなストーリーなのかもしれない。オチもわかりやすく、ハラハラドキドキすることもない。こう書くと、じゃあ駄作なのかと思うかもしれないが、これが不思議と楽しめるのだ。その要因ははっきりとわかっている。なんといってもシド役のウディ・アレンの面白さのおかげだろう。

とぼけた表情でサンドラと言い合いをする。擬似親子として振舞う二人の行動は明らかに不自然で、違和感がある。しかし、セレブで人を疑うことを知らないピーターは、バカ正直に信じてしまう。ピーターのマジメっぷりがシドのハチャメチャ感を際立たせ、間に挟まれるかたちのサンドラが右往左往する。シドが発する自覚のない嫌味たっぷりな言葉。シドの見た目と、そのコミカルな動きが合わさるとすべてを許せるような何か感じさせる。三流マジシャンという設定も秀逸かもしれない。

ミステリーとして最後まで謎を引っ張るのだが、オチはあっさりと予測できる。流れとしては、最後の最後にシドがサンドラを助けてすべてハッピーエンドで終わるかと思いきや、そうはならない。これがこの作品のすごいところだ。本編の結末とはほぼ無関係にシドは画面から消えてしまう。このオチを見てあっけにとられるのは確実だろう。とぼけた表情で、飄々と軽口をたたくシド。このラストはシドにふさわしいのだろう。最後に正義のヒーローになる必要はまったくない。これが最適なやり方だ。

はっきり言えば、微妙な作品だ。純粋なミステリーを求めていたら、がっかりすることだろう。本作の見所はウディ・アレン。ただ、それだけだ。



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