小説家を見つけたら


 2009.7.30  二人の成長物語 【小説家を見つけたら】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
隠れた文才を持つ黒人青年。この青年が学業も優秀で文才もあり、さらにはバスケのスター選手ときた。引きこもる謎の天才小説家と黒人青年の交流を描く本作。ぱっと見は、黒人青年の成長物語のように見えるが、実は天才作家の成長物語でもある。青年は天才作家に教わることにより、その才能を開花させはじめた。一方天才作家は、青年と交流することで、家から一歩も出ない引きこもり生活から、まっとうな生活へと戻ろうとする。黒人青年はチャンスをものにし、天才作家も機会を見逃さなかった。本来なら交じり合うはずのない二人が偶然引き合い、そしてお互いが自分の殻をやぶっていく。見ていて心地よく感じるのは、二人が成長していくからだろう。

■ストーリー

隠れた文才を持つ黒人青年と、処女作を残し姿を消した天才作家が、お互いに交流を通して希望と勇気を見出していく。

■感想
偏屈な老人がどのようにして心を開いていくのか。最初はお互いがお互いを意識しながらも、ぎこちない二人。黒人青年はわりと早めに天才作家に対して心を開くが、天才作家は変わらず自分の我を通す。二人の関係が変わっていくと共に、黒人青年にも大きな転機がおとづれる。物語としての山と谷が黒人青年の成長の妨げにはならず、良い刺激となっている。観衆たちは、黒人青年の成功を願っているが、心のどこかでは何か大きな落とし穴があるのかもとドキドキして見てしまう。この時点では心の中は黒人青年を応援し続けている。

天才作家は黒人青年と交流することによって、だんだんと引きこもりから脱しようと考えている。天才作家の心の雪が解けるように、黒人青年と打ち解けていく様は、見ていて心が和んでくる。二人は教師と生徒のような役割に変わりはないが、人生においては黒人青年の方が先輩のような感じにすら見えてきた。偏屈でとっつきにくく、癖のある老人。とてもやっかいだが、黒人青年は根気よく接している。この二人の行動を見ていると、どうにかして、二人には幸せになってもらいたいという思いが強くなってくる。

物語のアクセントとして登場する意地悪な教師。これが、絵に描いたような意地悪教師だ。天才作家とも少なからず関係があり、黒人青年を目の敵にする。それにしても、うますぎる文章という言葉は、なかなか聞けることではないだろう。意地悪教師がやり込められ、ラストでは大きな感動が押し寄せてくる。ラストシーンに登場する天才作家の朗読シーン。ここは本作の一番の見所なのだろうが、文章をすべて聞かせることはない。なぜなら、それほど感動する文章というのはいったいどんなものなのだろうと、登場人物たちの表情から読み取らせる方式をとっているからだ。さすがに文章だけで感動させるのは難しいのだろう。

偏屈老人と若者の心の交流を描いたすばらしい作品だ。



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