少年と砂漠のカフェ


 2010.6.28  静かなドキュメンタリー的作品 【少年と砂漠のカフェ】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
まるでドキュメンタリーを見ているような気分にさせられる作品。砂漠に囲まれた国境近くのイランの町。カフェで働くアフガン難民の少年と、その生活を描いている。見渡すかぎり砂漠の連続。風景の美しさや、情景から感じるものはない。二十一世紀である現代であっても、これほど原始的な生活を強いられているのかという驚きと、それを当たり前のように受け入れる人々。ボロボロのバイクやトラックを修理しながら、だましだまし使う生活。ただ生きることに精一杯であり、アフガン難民ということが最後まで足かせとなる。画面からにじみでてくる物悲しさは、特別な音楽もなくただ砂漠にたたずむカフェがそう思わせるのだろう。

■ストーリー

砂漠に囲まれたイランの小さな町・デルバラン。そこに建つ1軒のカフェを経営する老夫婦と、そこで働くアフガン難民の少年との絆を、美しいロケーションと社会風刺を交えて描く。

■感想
砂漠に囲まれた町で生活する人々。まず思うのは、入浴などしているのかということだった。粗末な部屋で、水が何よりも大事な地域。移動手段としては、壊れかけたトラックやバイクだけ。警察の納得いかない締め付けや、そこで生活する人々の苦悩などお構いなしの雰囲気。なんだか昔の日本を見ているようで、タイムスリップした気分になった。乾燥しカサついた砂漠の中で、少年が働く姿を見ていると、そこに何か悩みがあったとしても、どんな悩みも関係ないような気がしてきた。少年はただ生きるためにそこにいるのだから。

イランにおけるアフガニスタン人がどういった扱いなのか。父親はタリバンと戦い、国境付近では厳しい警戒がしかれている。ただ、アフガニスタン人というだけで警察から目の敵にされ、いわれの無い言いがかりを押し付けられる。イランとアフガニスタンの関係がこれほど悪いということに驚き、砂漠で生活する人々の驚きの生活様式も垣間見ることができる。普通の日本人の感覚からしたら、とんでもなく過酷な生活のように感じるが、そこに住む人々にとってはこれが普通なのだろう。日本のように仕事や人間関係によるストレスは皆無でも、生きるために必死にならなければならないストレスはある。

トラックや車、そしてバイクの故障が印象的に描かれている。あらゆる場面で、なかなか動かないバイクと車。満足に修理もできず自分たちで応急処置だけして、無理矢理走らせる。タイヤ交換やバッテリー交換を自分たちで行うのは当たり前、とんでもない修理までも自分たちでやろうとする。車が満足に動かないというのは、何を表現したかったのだろうか。車検など存在しない国にとって、車は一生の財産なのだろう。おそらくどこかの先進国から流れ着いたボロボロの車を大事に乗り続けるのが、そこに住む人たちだ。

決して平穏とは言えないが、日々落ち着いた生活のようにも見えてしまった。



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