2008.12.14 才能が無いものは無能か? 【ストレンジ・デイズ】
■ヒトコト感想
女優として類まれなる才能をもつジュンコ。ジュンコに偶然出逢った反町の心情と行動を描く本作。作者お得意の裕福で何不自由なく幸せに生活していた男が、何もかも投げ出したいと思ったときに出会った女との出来事だ。それにしても、基本として存在するのがこの裕福な男。そして、魅力的な女に、業界人らしき人物。まったく別世界の話なのだが、圧倒的なまでの存在感と、見た者をひきつける魅力をもった女というのが面白かった。結局ジュンコがどのようになったのか明確には描かれていない。まるで才能が無い人間は無能のようなメッセージさえ感じる本作。ジュンコのシンデレラストーリーかと思いきや、いつもの不思議な世界となるのはもう慣れてしまった。
■ストーリー
絶望から狂気へと向かっていた反町は深夜のコンビニで天才的な演技力をもつ巨大トラックのドライバー・ジュンコに出会う。ゆるぎない眼差しをもつ彼女は血管の中にサナダ虫のような等身大の異生体を宿しているという。そして、二人の奇妙な生活が始まった―。
■感想
謎の生き物が自分の体の中を這い回るというイメージ。それが瞬間的に演技ができることと、どのような関係があるのか。中には少しだけ説明らしきものもあったが、どうにも解せなかった。見た者の目を釘付けにするほどのオーラを持った女が、トラックの運転手をしているという流れ。そして、ジュンコを売り出そうとするが、自分はジュンコがいなければ無能な存在だと考える反町。それまでの反町の生活が普通と比べると恵まれているはずが、どこかで歯車が狂い、他人からは精神に異常をきたしたように思われる。恵まれすぎた生活の行く末のように感じてしまった。
ジュンコを売り出そうと映画を計画する反町。資金を調達したり、脚本家を見つけたりと、このあたりはもしかしたら作者の実体験にもとづいているのだろうか。映画に関して作者は成功していない。そのコンプレックスのようなものが垣間見える部分が多数ある。このコンプレックスが反町に対して無能だといわせる要因となっているのだろうか。ジュンコのような女優が、もしかしたら作者の周りにもいたのかもしれない。そして、映画は失敗したのだろう。なんだかものすごくリアルに感じてしまった。
後半からはジュンコの存在感よりも、ロールプレイがメインとなっていく。そこでも感じるのは反町の嫉妬や、ねたみだ。この思いのしつこさは、何かを暗示しているのだろうか。持たざるものが持つものに対して描く憧れとは違う、何か決定的に自分には手が届かない、そこであきらめるのではなく、自分の駄目さかげんにとことん失望する。そんなネガティブなメッセージを感じてしまった。作者と反町が一体となっているとは到底思えない。このような作品を書けるのは、どこかでこんなタイプの人間を見てきたからだろうか。
物語としては面白いがなんだか中途半端に終わったような気がした。
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