スラムオンライン 


 2009.8.4  のっぺりとした対戦格闘ゲームの世界 【スラムオンライン】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
ネット上の仮想空間で対戦格闘ゲームに燃える大学生の話。ゲームの元ネタはバーチャファイターだろう。バーチャが好きだった者からすると、対戦描写はよくわかり、面白かった。しかし、ただそれだけだ。主人公にまったく血が通ってなく、良くあるパターンの無口で無関心、それでいて女の子が寄ってくるタイプの主人公にはもはや飽きてきた感がある。どことなく、現実世界に見切りをつけたような無気力さもそう思わせているのだろう。ヴァーチャルな世界に生きがいを求め、最強を目指す。その気持ちはわかるが、主人公に感情移入できず、ただ、淡々と格闘ゲームの攻略法を見せられているような気分だった。

■ストーリー

Aボタンをクリック。ぼくはテツオになる―現実への違和感を抱えた大学1年の坂上悦郎は、オンライン対戦格闘ゲーム“バーサス・タウン”のカラテ使い・テツオとして、最強の格闘家をめざしていた。大学で知りあった布美子との仲は進展せず、無敵と噂される辻斬りジャックの探索に明け暮れる日々。リアルとバーチャルの狭間で揺れる悦郎は、ついに最強の敵と対峙するが…。

■感想
オンラインの世界で最強を目指す男。無敗と噂される辻斬りジャックを追いかけるのが仮想現実の世界で、現実の女の子と青い猫を探すのがリアルな現実の物語だ。なんだか、とってつけたような物語だと感じた。オンラインの世界だけでは味気ないので、青い猫を探すというイベントを用意し、女の子と絡ませる。かと思えば、仮想現実の世界で登場するつわものたちと、現実の人物たちの繋がりをにおわせるなど、いろいろと楽しませようと趣向をこらしているのはよくわかる。

対戦描写は文句がないと思う。しかし、これはバーチャファイターにはまっていたからこそ思うことで、まったくやったことがない人には辛い部分だろう。まるで攻略本を読んでいるように、カウンターだとか、パンチキャンセルだという言葉がでてくる。これはバーチャをやったことがなければ、まったく想像できないだろう。あえてそうしたのか、この部分についてこれない人は放置するつもりだったのだろうか。人間の反射神経では不可能と思われるほど完璧な投げ抜けが可能な理由も結局明らかにならなかった。何か、大きな秘密がありそうな気がしただけに、濁されたのは残念だった。

対戦格闘ゲームをテーマとした作品は今まで読んだことがない。確かに新しいのだろうが、キャラクターに魅力がないので、ものすごく平坦でのっぺりとした物語に感じた。対戦格闘をやるときの熱い思いというのを一切感じなかった。終始冷静で、淡々と相手を倒していく。ゲームをやったことがある人ならば、そんな冷静な思いではいられないとすぐにわかるだろう。ゲームに対してちょっと斜に構えたような部分も気になった。おそらく、作者はかなりバーチャ好きなのだろうが、その熱は伝わってこなかった。

好きなテーマなだけに期待したのだが…。



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