すべての美しい馬


 2009.7.2  残酷な旅が若者を成長させる 【すべての美しい馬】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
若者が自分の環境を変えようと旅にでる。夢と希望にあふれた刺激的な旅になるかと思いきや、旅はとんでもない方向へと進んでいく。冒頭からの雰囲気は馬に乗りながら旅をするちょっとしたロードムービー的なものかと思った。途中、馬泥棒の少年と出会い、仲間と三人でハプニングがありながらも楽しい旅を続ける。そんなことをイメージしていたのだが、大きく違っていた。旅はそんな甘く楽しいものではない。苦難でありながら、残酷という言葉がピッたるくる旅となっている。物語の後半は、もはや最初のさわやかさが一切なく、強烈なまでに馬に執着する。なぜそこまで馬にこだわるのか、それは最後までわからなかった。旅先での残酷なできごと、それら全てを経験してもなお、馬に執着するその心がタイトルにあらわれているのだろうか。

■ストーリー

冒険と自由を求めてテキサスからメキシコへと旅立った若者が、大人になっていく過程を壮大な自然をバックに美しい馬とともに描く。

■感想
馬に乗り仲間と旅に出る。あては無くとも、前に進めば何かある。若者らしく馬に乗って旅する場面は、とても希望に満ち溢れ楽しそうだ。そこに突如として参加することとなる、馬泥棒の少年。屈託の無い笑顔と、すばらしい銃の腕前を持つ、まだ笑顔があどけない少年。そんな三人の珍道中のはずが、旅は思わぬ方向へと流れていく。希望に満ちた旅が、一転、苦しく残酷な旅となる。序盤の雰囲気とは一変する残酷さ。まさかそんなことをするはずが、という思いはあっさりと裏切られ、、当たり前のように残酷な仕打ちが繰り広げられる。序盤とのギャップはそうとうなものだ。

中盤以降は自由を求める旅というのではなく、たんに意地の張り合いのような感じだ。なぜ、そこまで馬にこだわるのか。あれほど危険で残酷な目にあっていながらも、馬にこだわるその神経。メキシコでの生活を思うと、少しでも早く故郷に帰りたいと思うはずだが、こだわりを持つ。ロードムービー的な要素は一切無く、旅先での辛い経験を淡々と描写しているような形だ。下手をすれば、馬泥棒の幼年がたどった道と同じことを繰り返すかもしれない。恐怖に満ちた極限の生活の中でもなぜか馬に対する強いこだわりだけは捨てていない。このあたりが一番理解できなかった部分だ。

明るく楽しい、ハプニング満載のロードムービーを想像していたら、とんでもない展開だった。ラストは、なんとかかろうじてカタルシスを得ることができるが、それでも後味が良いものではない。軽い気持ちで出た旅先で、とんでもない経験をする。武勇伝にすらならないような、トラウマを植えつける展開。正直言うと、この作品が何を言いたかったのかよくわからなかった。馬の美しさを表現するのに、残酷な旅が必要なのだろうか。辛く苦しい経験が、若者を成長させたというのはわかるが、ここまで残酷にする必要があったのか、はなはだ疑問だ。

タイトルと、序盤の雰囲気に騙されてはならない。中盤以降は残酷この上ないからだ。



おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
pakusaou*yahoo.co.jp