シッコ


 2010.5.24  キューバはこの世の天国だ 【シッコ】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
アメリカの医療保険問題は昔から言われていることだが、想像以上だった。かなり誇張している部分があり、本作に登場するのはほんの一部の人なのかもしれない。しかし、こういった事実があるということは知っておくべきだろう。民間会社が医療保険を扱えば医者と結託し、医療費を抑えようとする。それは当然予想できる流れだ。かといって、本作で登場し、まるでこの世の天国のように描かれているキューバのシステムをそのまま鵜呑みにするわけにはいかない。本作が見て見ぬフリをしているのは、医療費を誰が払うかということだ。キューバにしろ他の先進国にしろ、税金で医療費を払っているからこそできることだ。アメリカにこのシステムを組み込めばまた違った問題が生まれてくるだけだろう。

■ストーリー

超大国なのに保険充実度は、なんと先進国中最下位のアメリカ!!先進国で唯一、"国民健康保険"が存在しないアメリカでは、国民の6人に1人が無保険。毎年1.8万人が、医療費を払えないために治療を受けられずに死んでいく。しかし『シッコ』は保険に入っている人々についての映画である。え? なら何の問題があるの?それは、アメリカの医療保険システム! この問題のシステムにより人々は高い保険料を払っていても、一度、大病を患えば治療費が支払えずに病死か破産を迎えるしかないのだ。「こんな医療制度はビョーキ(Sicko)だ!!」マイケル・ムーアがほえると、医療業界はたちまち厳戒態勢に!!

■感想
医療保険に加入していない人が医療費に困るのは自業自得らしい。本作では医療保険に加入しているにも関わらず満足な医療を受けられない人に焦点を当てている。本作の根底にあるのは、他先進国との比較である。あの国は医療費がとんでもなく安いか、さらにはタダだ。だけど、アメリカはめちゃくちゃ医療費が高く、さらには保険会社が医療費を節約するため、医者と結託して嘘の診断書まで書く。という流れになっている。ある意味事実であるし、民間企業が医療保険を取り扱うことの問題点を的確についている。

だからといって、医療費の安いキューバがこの世の天国のように描かれているのは納得できない。医療費が安いのには理由がある。医者の給料や薬代を誰がだすのか。アメリカは個人と保険会社で、キューバやその他の先進国は税金として賄っている。つまり全員が病人の医療費を肩代わりしているということだ。助け合いの精神で、みな平等で良いじゃないかと思うかもしれない。まぁ、弱者に優しい社会なのだろう。しかし、行き着く先は見えている。高齢化社会となり、医療費が嵩み、いずれパンクするはずだ。それは日本も同じことで、その影響は医療保険費の増加という結果となる。

もし、医療費が全てタダになったら。たいしたことない病気でも高い医療費を使い、治療するだろう。そうなってくると、そのひずみは医療現場の崩壊に繋がる気がする。そう言った意味では、ある程度医療費は高額な必要もある。医療費がすべてタダなんてもってのほか。アメリカが医療費を全てタダなんてことをするはずがないが、そうなれば医療システムは崩壊するだろう。日本ですら、すでに崩壊しつつある。民間の保険会社がすべて悪のように描かれているが、ある程度のバランスで必要悪なのかもしれない。

しかし、相変わらずマイケル・ムーアの描き方は極端だ。



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