最後の授業 ぼくの命があるうちに 


2009.7.13  パワー溢れる最後の授業 【最後の授業 ぼくの命があるうちに】

                     
■ヒトコト感想
余命あとわずかと宣告されたとき、人はどうするのだろうか。間違いなく言えることは、本作の作者であるランディ・パウシュのようなことはできないということだ。もしかしたら泣き叫び、何もする気が起きないかもしれない。または、家族との時間を大切にしようとするのかもしれない。授業内容が収録されたDVDが巻末にあり、本はその授業内容を補完するような形で描かれている。癌になったことを悲観する内容でもなければ、病気に負けない秘訣が語られているわけでもない。ただ、単純に子供のころからの夢を語り、どうすれば夢を実現できるかを語っている。正直、冒頭に説明がなければ、とうてい余命わずかだとは思えない。それほどエネルギッシュでユーモアにあふれており、面白い作品となっている。ただし、DVDを先に見ると本の内容が退屈で仕方が無い。最初に本を読んだ方がいいだろう。

■ストーリー

2007年9月18日、ペンシルベニア州ピッツバーグにあるカーネギーメロン大学の講堂で、1人の教授が「最後の授業」を行った。教授の名前はランディ・パウシュ。46歳。最後の授業をするにはまだ若すぎるパウシュだが、彼にはこのとき、長年親しんだ大学に別れを告げざるをえない事情があった。膵臓から肝臓へと転移したガン細胞。医師から告げられた命の刻限は――「あと3カ月から半年」。こうしてパウシュの最後の授業は始まった。スクリーンに映し出された演題は『子供のころからの夢を本当に実現するために』。それは、「最後の授業」であると同時に、幼い3人のわが子に遺すためのメッセージだった。

■感想
アメリカ人らしく、講義のいたるところにユーモアがちりばめられている。本では感じられない臨場感をDVDではしっかりと感じることができる。自分の余命を意識したとき、はたして、このような講義を最後の授業として行うことができるだろうか。悲壮感などまったくなく、癌に対しての恨みつらみもない。かといって、今までの人生の思い出を語るわけでもない。ただ、子供のころに思い浮かべた夢を、今、現実としてどのように実現できたか。実現するためにはどんな壁があって、どうやってそれを乗り越えることができたかを語っている。べつにこれは癌で余命わずかだからというのはほとんど関係のない内容だ。

はっきり言えば、本は微妙だ。DVDの楽しさに比べるとかなり落差が激しい。随所にちりばめられているユーモアと、それに反応する会場を感じることができないからだ。表情も重要だ。まったく病人と見えないほど生き生きとしており、エネルギッシュでパワーにあふれている。こんな教授がいたら、さぞ授業も楽しかったのだろうと思う。さすが名物教授と言われるだけあって、会場を引き込むの技術はすばらしい。本を読む限りは、偏屈でオタクな印象を持ったが、映像を見ると、まったくそんなことはなかった。さわやかで、親しみやすいように感じられたのだ。

早足で進む講義。最後の最後に、この講義の意味が語られる。それが涙を誘う場面だ。この場面があることで、ランディ・パウシュは癌に侵され、余命わずかなんだと感じてしまう。会場はわれんばかりの大喝采。スタンディングオベーションの嵐だ。その中にちらほら座っている人もいるが、それらの人は例外なく涙を拭くのに忙しく、立つことができない人たちだった。最後の授業というタイトルがついているが、とても最後には見えない。まだ、今でももしかしたらピンピンしているのではないかと思えるほどだ。本の内容に安易に感化されることはないが、言いたいことは十分に伝わってくる。ただ、まったく悲壮感がなく、明るい最後というのがすごく救われる気がした。

本はともかく、付録のDVDは必見かもしれない。



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