2009.1.22 この雰囲気は好きだ 【砂漠】
■ヒトコト感想
学生生活を楽しむ五人の大学生の物語。そう言ってしまえば身も蓋もないが、普通ではない。まず、この五人というのが明らかに異質だ。少なくともその辺にいる大学生にはないタイプだ。融通が利かず、屁理屈ばかり言うタイプや、無愛想な美女。超能力を使える女に、学生時代は遊ぼうと必死になる男。遊びに必死な男以外は、身近に絶対に存在しないタイプだ。また、存在していたとしても恐らく友達にはなっていない。それほど特異で、ありえないタイプなのだが、それだけに面白い。屁理屈を通り越して、それだけで一つの思想と思えるようなものたち。一本スジの通った物言いは、例えぶっ飛んでいたとしても好感がもてる。その結果がなんだかほのぼのとして、そして、安心できる結果に繋がるならなおさらだ。
■ストーリー
入学、一人暮らし、新しい友人、麻雀、合コン……。学生生活を楽しむ五人の大学生が、社会という“砂漠”に囲まれた“オアシス”で、超能力に遭遇し、不穏な犯罪者に翻弄され、まばたきする間に過ぎゆく日々を送っていく──。
■感想
砂漠というタイトルを象徴的だと感じたのは後半になってからだ。学生特有のフラフラとした軽薄な雰囲気は一切ない。そのような場であっても、どこか異質だ。容姿的にどの程度のものなのか想像するしかないのだが、決してはじけた外見ではないのだろう。強烈な個性をひけらかし、あまりにも強情で、そして、屁理屈をこねくりまわす。知的な会話を読んでいると、なんだかこっちまでもが知的になったような気分になるから不思議だ。いつもの伊坂幸太郎風なキャラと言ってしまえばそれまでだが、この大学生の男女グループというのが妙にはまっているような気がした。
誰もが振り返るような美女。そして、鉄の思想をもった男。あきらめることを知らない男に美女が引き寄せられるというのは、なんだか心地よい。そして、諦めることを知らないということは、すごいことだということと、無謀なことでもあると理解できる。話していることはもっともらしいが、実はあちこち屁理屈に満ち溢れている。しかし、それを感じさせない終始一貫した考え方。なんだか、べったりと友達になるのはつらいが、ちょっとした合間に遊ぶくらいなら、まだ許せるのではないかと思えてきた。
事件や出来事としては、たいしたことはない。別にすばらしいトリックがあるわけでもない。くだらないことに真剣になったり、くだらない理屈を並べたり、くだらないことをしたせいで、大きな事故にあったり。どうでも良いようなことを繰り返すが、これが大学生なのだと思い出した。登場人物たちの特殊性のみでくだらなさを面白さに変えている。これが全てだろう。出来事よりもキャラクター。そして、人生の中で老人の次に暇な世代と言われる大学生ならではの雰囲気が、キャラクターにマッチしていたということだろう。
この手のキャラは作者の作品には良く出てくる。しかし、一番本作が合っているのではないだろうか。
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