ＲＩＺＥ

　2009.8.29　　体全体のバネを使った踊り　【ＲＩＺＥ】　　HOME

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

評価：3

■ヒトコト感想
普通に歩いていても、突然撃たれ命を落とす危険があるサウス・セントラル地区。どのギャングに入るかという選択肢しかない地区にピエロのダンスチームに入るという選択肢が増えた。アメフトやバスケをやらない者はダンスしかない。ダンスに情熱を注ぐ若者たちを描いた本作。肉体全体のバネを使って激しく踊る”クランプ・ダンス”。若者たちは激しい踊りに魅了され、大会が開かれるまでになる。ドキュメンタリーとしてクランプ・ダンスの激しさをリアルに感じることができる。若者の怒りや、行き場のない衝動をダンスへ向かわせたのはすばらしい。何もなければ、ただギャングになって死ぬだけだからだ。高速なクランプ・ダンスは必見だ。

■ストーリー
ギャングだった親を持つ青年、銃撃に巻き込まれて命を落とす少女など、サウス・セントラルの痛々しい現実が織り込まれる。現実に対しての怒りが、肉体表現へと導かれる過程。最先端ダンスムーブメント“クランプ・ダンス”に賭ける人々を追ったドキュメンタリー。L.A.の危険地区で子供たちにダンスを教える主人公の活動と大会の模様を伝える。

■感想
L.A.の危険地区では、何もしなければ若者たちは普通にギャングになってしまう。そんな流れを断ち切るために、ダンスを広めたという、あるピエロのドキュメンタリー。激しいクランプ・ダンスというものが、こういった理由で広まったのは以外だった。黒人ならではの、体全体のバネを使った激しいダンス。あまりに高速すぎて、まるで早送りをしているようにさえ見えてしまう。特別なしきたりというのはなく、ただ、自分の心の中にある怒りや鬱憤を体で表現するのがクランプ・ダンスらしい。はたから見ると、みんなで輪になり、その中心で二人が踊る。その激しさから、喧嘩しているようにすら見えてくる。

ダンスが広まってくると、いくつかのチームができはじめ、それらで争うようになる。驚いたのが、そのダンスイベントがでかいホールを使ってテレビ放送されるまでになっているということだ。いち地方で始まったダンスがここまで大きな影響力を示す。それは、ダンスが体ひとつさえあれば、いつでもでき、それが黒人たちの気質にあっていたからだろう。アジア人や白人ではなかなかできないあの動き。ダンスにかける思いというのも、半端なものではないのは確かだ。

ドキュメンタリーということもあり、リアルな表情や思いを知ることができる。ただ、感情移入することは難しい。そこでダンスするものたちは、他にはギャングしか選択肢がないから、ダンスにかけているのだ。普通に、ダンスを趣味としてやっている日本人とは考え方が根本的に違っている。あの強烈なダンスは、目に焼きついて離れない。あんな動きを人間ができるのかと、驚かされるばかりだ。決して世界的にブームになるようなダンスではないが、見た目のインパクトは相当なものがある。

上半身裸で汗を飛び散らせながら動くシーンは、芸術的ですらある。

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