連鎖 真保祐一


2010.2.1  汚染食品横流しにピンとこない 【連鎖】

                     
■ヒトコト感想
放射能汚染食品が横流しされている。そんな事件から始まった本作。この食品横流し事件に対してまったく興味がわかず、なんだか新聞の片隅に小さくのっている事件を読まされているような、そんな気がした。最初のとっかかりに興味がもてないと、その後の事件もなんだか集中することができなかった。ミステリー的な面白さも、どこかしっくりとこず、ラストにはしっかりと、どんでん返しが用意されていたが、衝撃はなかった。全体を通して汚染食品の話や、食品衛生監視員の業務にしても、なじみがないだけに、のめりこむことはできなかった。別世界を知ることができたのはよかったが、ミステリーの前提として、世界観にはまれないと、その後のトリックにもしっくりこない。

■ストーリー

チェルノブイリ原発事故による放射能汚染食品がヨーロッパから検査対象外の別の国経由で輸入されていた。厚生省の元食品衛生監視員として、汚染食品の横流しの真相究明に乗りだした羽川にやがて死の脅迫が…。

■感想
時代的なものもあるのだろう。もし、本作をリアルタイムに読んでいたとしたら、放射能汚染の食品が気になり、物語にはまり込めたかもしれない。汚染食品の横流しや、積み戻しの話など、興味深いが頭の中に絵が浮かんでこなかった。本作の出来事がまったく過去の話かというとそうではなく、現在でも当てはまる部分はあるのかもしれない。だとしても、旬のネタという感じはなく、食品の汚染基準がどうだとか、シンガポールが放射能汚染に異常に厳しいなんていうことに興味をもてなかった。そして、ミステリーのテーマとなるほど、重大事件のように感じられなかった。

ジャーナリストが不可解な事故にあい、それが自殺かどうかを検証することが本作のもう一つのメインでもある。その部分も、なんだか小難しいことを並べ立て、結論がでたとしてもまったく現実味がないような気がしてならなかった。外部から車のアクセルを踏み込ますトリックというのも、ちょっとスケールが小さく感じた。本格的なミステリーとしての面白さを感じるよりも、解明する過程が面白いというのはよくあるパターンだが、本作はどちらもいまいちのような気がした。自殺に見せかけた他殺というのは、よくあるパターンだが、検証方法がまったくピンとこなかった。

汚染食品横流しに興味を持つことができれば、かなり楽しめるだろう。検疫官や食品Gメンというのも、興味を持てれば面白い題材なのだろう。テーマはめずらしく、他にはないパターンなのだが、それだけに当たり外れも大きい。はまり込めば、他にないパターンなだけに、お気に入りの一作になることは間違いないだろう。そうでなければ、厳しいのは確かだ。お決まりどおり、すべての元凶とも言うべき人物はかなり意外性がある。しかし、その必然性も微妙であれば、結論に至るまでの過程もとってつけたように感じられた。結論がでたとしても、大きな意外性や衝撃は少なかった。

あまりなじみがないテーマだけに、当たり外れは大きい。



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