2010.6.26 時空を越えた運命のラブストーリー 【ライオンハート】
■ヒトコト感想
時空を越えて運命の出会いを繰り返す二人。中世ヨーロッパが舞台となり、運命に導かれるように出会う二人。ちょっとしたSFぽくもあり、ラブストーリーでもある。歴史的知識があればなお楽しめたのだろうが、中世ヨーロッパの雰囲気を頭に思い描くことはできたが、時代背景をしっかりと認識することができなかった。いくつかのパートに分かれ、あるときは女だけが運命を感じ取り、時には両方が運命に気付いていない。すべてが必然なのだろうが、二人が出会うまでのもどかしさと、奇妙な事件などがあいまって、ちょっとしたミステリー風にもなっている。ぐるぐると繰り返される運命の出会いを読んでいると、時間軸がねじれ複雑なタイムパラドックスのようにも感じてしまう。
■ストーリー
いつもあなたを見つける度に、ああ、あなたに会えて良かったと思うの。会った瞬間に、世界が金色に弾けるような喜びを覚えるのよ…。17世紀のロンドン、19世紀のシェルブール、20世紀のパナマ、フロリダ。時を越え、空間を越え、男と女は何度も出会う。結ばれることはない関係だけど、深く愛し合って―。神のおぼしめしなのか、気紛れなのか。切なくも心暖まる、異色のラブストーリー。
■感想
時を越え、世代も越え出会う二人。必ずしもお互いがしっくりくるような年齢で出会うわけではない。あるときは子供と大人として出会い、あるときは若者と老人としても出会う。どんな出会いであっても、お互いが惹かれあい運命だと理解する。まったく説明がなく、遥か太古の昔から出会う運命にあるというだけで、二人が惹かれあうのはもはやこの手の作品には欠かせないことだ。本作はその出会い方と、両方とも必ずしも運命を理解しているとは限らないことが面白さの要因かもしれない。年齢も離れており、相手は何もしらない。そんな状態であっても、運命を信じる。強烈な思いを感じる部分だ。
最終的に運命の出会いはなんだったのかというのは、はっきり語られない。ほんの一瞬の出会いのあと、悲劇的な事実が待ち受けていたとしても、運命に逆らうことはない。一瞬の出会いのために、すべてを投げ出すというのは究極の恋愛なのかもしれない。綺麗すぎるプラトニックな場面の数々は、ヨーロッパの美男美女のイメージを引き立たせる雰囲気がある。すべてにおいて美しくそしてはかない純愛なのだろうが、決して成就することのない恋愛のような気がしてならなかった。
ヨーロッパの歴史や、絵画などそのあたりの知識があればさらに楽しめることだろう。歴史的に重要な場面で出会う二人というのも、運命を強く印象付けるが、その歴史的場面をほとんど理解していないので、あまりインパクトがなかった。本作を楽しむためには、それなりの知識が必要なのだろう。ヨーロッパが舞台ということがとっつきにくさを強くしているというのもあるかもしれない。これがもし、現代の日本を舞台としたり、江戸時代の日本だったりすると、とたんに古めかしい胡散臭い物語になるかもしれないが…。
ミステリー風味が入ったラブストーリーだ。
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