puzzle 恩田陸


2010.4.5  納得できないトリック 【puzzle】

                     
■ヒトコト感想
廃墟に突如あらわれた不思議な死体。高層アパートの屋上に墜落したとしか思えない全身打撲死体や感電死など、いったいどんなトリックが隠されているのか、興味がつきることはない。非常に短くコンパクトにまとまっているような気がするが、内容はかなり不満足だ。二人の検事が廃墟と化した島で、会話を繰り広げる。それぞれで事件に対しての想像を語り、真相を探ろうとする。結果的に、しっかりとトリックは解明されるのだが、それは到底納得できるようなものではない。あまりに詩的というか、哲学的というか、現実感のない結末に、なんだか全てをうやむやにされたようだ。死体の謎が語られたとしても、すっきりしないばかりか、ストレスがたまってしまう。

■ストーリー

学校の体育館で発見された餓死死体。高層アパートの屋上には、墜落したとしか思えない全身打撲死体。映画館の座席に腰掛けていた感電死体―コンクリートの堤防に囲まれた無機質な廃墟の島で見つかった、奇妙な遺体たち。しかも、死亡時刻も限りなく近い。偶然による事故なのか、殺人か?この謎に挑む二人の検事の、息詰まる攻防を描く驚愕のミステリー。

■感想
廃墟にあらわれた奇妙な死体。その死因はまったくわからないだけに、一体何が起きたのかという疑問ばかりが強くなる。そして、本作の語り役でもある検事二人が、不可解な死体に対しての見解を語る。奇妙な死体の原因がなんなのか?その秘密を知りたいと思う気持ちだけで読み進めることができた。冒頭に登場した奇妙な新聞記事など、不思議な雰囲気をかもしだしてはいるが難しい。事件を解明する手がかりとして、手にした記事などに自分の名前が含まれているというくだりがある。これこそこじつけ以外の何者でもない。

事件は唐突にして解決へ向かっていく。そのきっかけは些細なことだが、ほんの些細なことから事件解決まで飛躍できるのがありえない。少なすぎるヒントから強引に解決まで突っ走る。まるで終わりまでのページ数を知っているかのごとく、早足で結末まで進んでいく。そのため、あっという間に読み終わったという印象が強い。さらには、なんだか無理矢理全てのトリックに納得させられている気分になった。登場人物たちがすべて納得ずくで先に進んでいるために、おかしいという思いがかき消されてしまう。

冷静に考えるとありえないことだらけだ。地図に書かれた数字を全て足すと、その合計数字はある人物の名前が含まれている。こんなことをサラリと言われたところで、共感はできない。合計五万以上にもなる数字を足していくなど、狂人でしかない。その他にも、高層アパートの死体は、突風に巻き上げられた結果だなんてことを素直に納得できるはずもない。ありえないことだらけだ。ただ、昭和と年号が決まる前のくだりはまったく知らなかっただけに衝撃を受けた。もしかしたら、自分が光文生まれになっていたかもしれないということだ。

非常に短くサラリと読めるが、それなりのものだ。



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