プレッジ


 2010.5.10  このラストは印象に残る 【プレッジ】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
事実か妄想か、引退した刑事ジェリーが犯人を追い詰める。ラストの展開からして、まさかそうなるとは思わなかった。結局犯人は存在したのか、しなかったのか。偶然が偶然を呼び、ジェリーの妄想だろうという結末となる。一つの事件に対しての執念と勘。すばらしい俳優たちが信じられないようなチョイ役として登場する。これはおそらく監督であるショーン・ペンの人徳なのだろう。物語も一筋縄ではいかず、癖はあるが、普通の映画に飽きた人には十分刺激的で楽しめる作品だろう。哀愁漂うジャック・ニコルソンのすばらしい演技と、脇を固める俳優たちの力強さ。ジェリーの苦悩というのが、手に取るようにわかったような気がした。

■ストーリー

引退間際の刑事ジェリー(ジャック・ニコルソン)は、殺された少女の母親に懇願されて事件を追うが、容疑者が自殺して事件は解決。しかし彼は、定年後も事件の足跡を調べ、真相を追い求めていくうちに妄想の世界の虜となっていく…。

■感想
本作は映画好きが好むような細かな仕掛けがある。二転三転する流れ。結末をぼやかしながら、あらゆるパターンを想像できるようにしてある。監督は映画を見終わった後、一緒に映画を見た人とあれこれ謎について話をしてほしいのだろう。細かな伏線をすべてもれなく見ていけば、かならずある一つの結末に行き着くような気がした。主人公であるジェリーは最初から囮にするために、少女の母親に近づいたのだろうか。このあたりの解釈も人によって随分と変わってきそうな気がした。

極めつけは結末だ。犯人は存在したのか、しないのか。ジェリーは犯人が近づいてくるという勘を感じとった。しかし、犯人は現れなかった。それまでの様々な犯人候補たちの中に存在しない新たな人物なのか、それとも…。議論するための材料は多数取り揃えられている。その中で、自分が思うように想像する。本当の映画好きが作ったような作品だ。ジェリーのプライベートが一切見えないまま、中盤になり突如として実は×2だということを告白する。初期のジェリーと中盤以降のジェリーはまるで別人のように見えた。もしかしたら、そこがターニングポイントなのかもしれない。

ありきたりな映画であれば、ラストはジェリーのことを老いたとバカにしていた元同僚たちを見返すように、犯人が現れ、激しい銃撃戦のすえ少女を助けるという展開だろう。実際そうなるだろうと思っていた。しかし、本作はセオリーどおりの流れにのりながら、あえて直前で激しく脱線する。ジェリーは同僚たちから精神に異常をきたしたと思われ、ジェリー自身も自分の勘を信じられなくなる。カタルシスを得るためには、ありきたりな結末となるべきだった。見終わると妙な気分となり、少しストレスが溜まるかもしれない。しかし、圧倒的に印象に残ることは間違いない。

このラストがあってこそ、作品全体が強く印象に残っている。



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