2010.9.9 世界は結局変えられたのか? 【ペイ・フォワード】 HOME
評価:3
■ヒトコト感想
「世界を変える」ということから、”ペイ・フォワード”を思いつく少年トレバーはすばらしい。ユートピア的発想だとか、性善説すぎるというのはあるだろう。ただ、トレバーが考えた、厚意を他人に返すという発想はすばらしいと思えた。シモネット先生との出会いや、アル中の母親の影響もあるのだろう。トレバーのピュアな視線は、大人たちの汚れきった心を浄化してくれるような気がした。物語はトレバーの家庭環境の話と平行して、数珠繋ぎとなって広がっていくペイ・フォワードの物語が描かれている。世間はこれほど楽観的だとは思わないが、もしかしたらという気持ちにさせる何かがある。しかし、結末の流れは微妙だ。
■ストーリー
11歳の少年トレバーは、社会科の授業中、担任のシモネット先生から「もし君たちが世界を変えたいと思ったら、何をする?」と問い掛けられる。悩んだ末にトレバーはあるアイデアを思いつく。それは"ペイ・フォワード"。他人から受けた厚意をその人に返すのではなく、まわりにいる別の人へと贈っていく…という奇想天外なアイデアだった。やがて、少年の考えたユニークなアイデアが広がり、心に傷を負った大人たちの心を癒していく…。
■感想
少年トレバーが考えたアイデアは幸運のねずみ講と言っても良いようなものだ。人は自分の利益になることなら、他人に広めることはできる。それが、自分とはまったく無関係な他人に厚意をふりまくことがはたしてできるだろうか。観衆は作中の大人たちやシモネット先生と同じように、心のどこかでそんなことはできるはずがないと思うだろう。ただ、純粋なトレバーのキラキラした目を見ていると、できるかもしれないという根拠のない自信が湧いてくるから不思議だ。
トレバーの家庭環境は良いとは言えない。そこに救世主としてあらわれたシモネット先生。この先生とトレバーの母親の関係がもう1つのポイントとなっている。トレバーは他人の幸せを願い、見ず知らずのホームレスに厚意をふりまいて、いずれ自分の家族に厚意が返ってくるのを期待したのだろうか。幸せで暖かい家庭で育った少年ではない、厳しい環境で育ったトレバーが考えたということが、ペイ・フォワードという物語に重みを与えているような気がした。
ラストの展開はどうなのだろうか。明らかに涙を誘うような流れだ。確かにトレバーの思いは広まり、その成果が目に見えたというのはいい。それにしても、この結末しかなかったのだろうか。感動の余韻を残すためにの演出だろうか。残されたシモネット先生と母親の苦悩を考えると、たとえペイ・フォワードが広まったとしても、自分たちには一切関係ないと思わないだろうか。自分がトレバーの親の立場だったら、良い気分はせず、どこか惨めになるような気がした。
本作はかなり前の作品だが、ペイ・フォワードが世界に広がっていないことを見ると…。まぁ、これが人間なのだろう。
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