日本の黒い夏 冤罪


 2009.9.4  こんなマスコミはいない! 【日本の黒い夏 冤罪】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
松本サリン事件での警察とマスコミの対応を糾弾するような本作。当時、本当に本作のようなやりとりがあったかどうかはわからない。しかし、確実に言えるのは、ここまで正義感にあふれたマスコミというのは存在しないだろうということだ。自分たちが冤罪に協力したことを認め、高校生たちから取材を受ける。あえて、内部事情を明かし、真実を見失っていたと認めることなど、もっともマスコミが恐れることではないのだろうか。ある意味、綺麗ごとのように見える本作。しかし、松本サリン事件周辺での出来事は、真実味にあふれている。日本全体が、一つの方向へと導かれた時期。世論の恐ろしさというのをまざまざと思い知らさせられる作品だ。

■ストーリー

1994年6月に実際に起きた“松本サリン事件”を題材にした社会派ドラマ。第1通報者が殺人容疑で家宅捜索されたことで、まるで犯人のように報道され冤罪を着せられてしまったことの全貌を、マスコミや警察捜査の在り方を鋭く問いながら描き出している。

■感想
松本サリン事件における、マスコミや警察捜査のあり方を問い正している本作。当時の状況としては世論としても、すでに第一通報者が犯人のように仕立て上げられていた。本作を見て思うのは、偶然が冤罪を生んだのかもしれないということだ。もし、第一通報者が薬学部出身でなければ、家に薬品がなければ、本作のような冤罪は発生しなかっただろう。そうはいっても、冤罪は確実に、警察の捜査が悪いことに変わりはない。すでに結果を知っていながら本作を見ると、警察捜査に対して、ひたすらイライラとした気分がつのることになる。

本作ではマスコミを取材するというような形で物語がすすんでいる。本作のように自分たちの非を認め、これほど正義感にあふれたマスコミが存在するのだろうか。世論に反するように第一通報者を擁護したのはあくまで視聴率を稼ぐため。冤罪に協力したということを、あっさりと認めるのもありえないように感じた。冤罪の元としては、警察の捜査に問題があったのかもしれない。しかし、それを煽ったのは間違いなくマスコミだ。それを糾弾するはずの本作が、なぜか、正義感あふれるマスコミの美談のようになってしまっている。

松本サリン事件が発生した当初の再現はショッキングだ。実際に本作のようなことが起こったのかわからないが、当時をほとんど覚えていないだけに、よりインパクトがでかい。サリンという大量殺害兵器の名前がはじめて登場したのもこの事件が最初で、日本中が怪しげな雰囲気に包まれていた。そんな中、冤罪を防ぐために動いたマスコミはいただろうか。視聴率稼ぎ以外では、まったく存在しなかったといってもいいだろう。この事件は特殊だとしても、マスコミが事件を煽るというのは良くあること。結局、マスコミは十年以上前と何も変わっていないように思えて仕方が無かった。

夏に本作を見ると、より暑苦しくなる。



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