2010.10.23 神秘の力は本物か? 【真夜中の神話】
■ヒトコト感想
飛行機墜落事故から奇跡の生還をはたした晃子。そこには神秘的な歌声を持つ少女の存在があった。呪術やプラシーボ効果など、医学では立証できない不思議な力がテーマとなっている。山奥の村に存在する不思議な力を持った少女。神秘的な能力をめぐり猟奇的な殺人まで発生する。裏でうごめく謎の組織や、目的のわからない記者など、物語の行く末を想像する材料は多数あるが、どの方向へと進んでいくのかまったく想像がつかない。神秘的な能力は本物なのか、そして科学的に説明がつく能力なのか。オカルト一辺倒ではなく、人を助ける奇跡の力に理由を持たせようとする本作。猟奇的な殺人に関してのみ、何か宗教的な香りを漂わせている。神秘の能力を科学的に解明しようとするのは面白い。
■ストーリー
薬学の研究に没頭した挙げ句、夫と娘を失った栂原晃子は、新たなテーマを求めてインドネシアに向かうが、飛行機墜落事故に巻き込まれる。だが奇跡的に助かった晃子は、山奥の村で神秘的な歌声を持つ少女と出会い、驚異的に快復した。一方、町では猟奇的な殺人事件が発生していた―。
■感想
夫と娘を失った晃子が奇跡の少女と出会う。人の怪我を治癒させ、長寿へと導くなぞの歌を奏でる少女。その不思議な力の秘密を、少しづつだが科学的に立証しようとするのが本作のメインだろう。少女をめぐり、様々な人物が暗躍する。正体のわからない謎の記者や、晃子の元同僚。そして、晃子たちを助けてくれる神父。誰が味方で誰が敵なのか一切判別できないまま、もしかしたら村人が神秘の少女を守るため、猟奇的殺人に手を染めたのかとさえ思えてくる。前半はまったく先の見えない展開だ。
中盤以降、それなりに物語の形が見えてくる。後半は神秘の力の科学的立証にページを割き、その説明に納得させられてしまう。現実世界にある不思議な力というのも、もしかしたら科学的に立証できるのかもしれないと思わせる流れだ。しかし、作中でも語られているように、神秘の力を世界に知らしめるより、ひっそりと暮らすことを望む人の方が多いのだろう。世界は何か新しく不思議な力が現れると、それに対して明確な説明ができないと、とたんに恐怖を感じてしまう。得体の知れない力に恐怖した結果、猟奇的殺人が起こる。なんだか、ひどく現実にリンクしているように感じた。
物語は一本調子というか、ある程度流れは決まっている。そこから大きく外れることはなく、なんとなく予想通りの展開となる。大どんでん返しはないが、猟奇的殺人の犯人は、多少驚きを感じるかもしれない。神秘の力を求めるため、身分を隠し、実は巨大な力を持った人物だったというのは定番だろう。ラストにはしっかりとアクションもあり、映画的なエンディングになっている。ミステリーとしての面白さというよりも映画的に安心してエンターテイメントを楽しめるといったところだろうか。
強烈なインパクトはないが、不思議な力の科学的立証は面白い。
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