レベル7 宮部みゆき


2009.3.13  大掛かりな謎と仕掛け 【レベル7】

                     
■ヒトコト感想
目が覚めたら記憶をなくした状態で、見ず知らずの男女が同じベッドで眠っている。そして、行方不明になった女子高生。まず、この二つのパートが交互に展開され、とてもミステリアスに何かを感じさせる。前半から中盤にかけて、謎だらけの展開でありながら、何か大きな秘密があるのではと感じ、二つのパートにはどのような繋がりがあるのかと疑問に思う。それらを考えながら、ページをめくる手を止めることができなかった。何か大きな陰謀が隠されているような流れから、後半になると一気にそれらの謎が解けてくる。結果として、謎がわかってしまうとなんだかドキドキ感が一気に半減したような気分になってしまった。なんだろう、事件の首謀者たちや、その他の人たちの執念というか、その燃料となる原因が意外にたいしたことなかったのが原因なのだろうか。

■ストーリー

レベル7まで行ったら戻れない―。謎の言葉を残して失踪した女子高生。記憶を全て失って目覚めた若い男女の腕に浮かび上がった「Level7」の文字。少女の行方を探すカウンセラーと自分たちが何者なのかを調べる二人。二つの追跡行はやがて交錯し、思いもかけない凶悪な殺人事件へと導いていく。ツイストに次ぐツイスト、緊迫の四日間。

■感想
なんの説明もないまま、二つのパートが同時進行する。行方不明の少女がもしかしたら記憶を失った女なのかと思いつつ、その展開にドキドキしながら読み進めることができた。記憶をなくした男女が、かすかな手がかりから自分自身を見つけ出そうとする。まるで良質なゲームをやっているかのように、謎の中にもしっかりとした冒険も含まれている。記憶をなくした二人はどんな関係で、なぜ記憶をなくしたのか。いくつかの不穏な動きと、レベル7というタイトルから、期待ばかりがどんどんと大きくなってしまった。

この前半から中盤までの物語の展開はすばらしいの一言だ。凶悪な殺人事件の秘密に繋がるような流れであり、何か大きな秘密を隠しながらも、最後にはそれらが明らかになる。事件とどのように関わりがあるのか。そして、一連の出来事の首謀者はどういった理由でこんなことをしたのか。頭の中にはどんどんと想像が膨らみ、勝手にその後の展開を予想したりもした。この予想により、期待はますます膨らんだ結果、期待の大きさにパンクしてしまったような感じだろうか。後半は怒涛の展開で、一気に謎が解けてくる。申し分のない流れなのは確かだし、過不足なく登場人物たちを活躍させている。

事件のきっかけや、本当の意味での首謀者など、二転三転するのはもはや定番なのかもしれない。ただ、その動機だけはどうしてもすんなり受け入れることができなかった。これほど大掛かりな仕掛けをしながらも、その結果として得られる利益は微々たるもの。そして、それを演出した男でさえも、動機にはすんなり納得はできなかった。これほど手の込んだ仕掛けをする意味はなんなのか。事件が解決すると、そればかりを考えてしまった。純粋にミステリーとしての面白さには文句ないと思う。ただ、読み終わったときに、原因はそれかぁというちょっと気が抜けたような感じになってしまった。

ミステリーとしては文句ない。ただ、少し納得できなかっただけだ。



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