劫尽童女 恩田陸


2010.7.29  思わずAKIRAを連想した 【劫尽童女】

                     
■ヒトコト感想
超能力を持った少女が謎の組織「ZOO」から追われる身となりながら、超人的な力を駆使して生き残る。子供がナイフの名手であり、超能力を覚醒さえていく。なんとなくだが、AKIRAを思い起こさせる流れだ。謎の組織や米軍から逃れるため、ひっそりと生活するが、安息の地はない。わりとありきたりな展開で、逃げ込んだ施設のシスターがマシンガンを持ったり、ジャーナリストが組織の人間だったりと、その絵をイメージすると面白いかもしれない。物語は基本的にはシリアス路線で、少女が能力を覚醒させていくにつれ、物語は大きく動いていく。かなり壮大な物語となり、関わる出来事もどんどんと巨大になっていく。特殊能力を持つ犬がある意味メインなのかもしれない。

■ストーリー

父・伊勢崎博士の手で容易ならぬ超能力を与えられた少女・遥。彼ら親子は、属していた秘密組織「ZOO」から逃亡していた。そして、七年を経て、組織の追っ手により、再び戦いの中へ身を投じることに!激闘で父を失った遥は、やはり特殊能力を持つ犬・アレキサンダーと孤児院に身を潜めるが―。殺戮、数奇な運命、成長する少女。彼女の行く手に待つのは何か。

■感想
謎の組織に追われる博士と少女。超能力少女に特殊能力を持つ犬。巨大組織に追われる少女がだんだんと超能力を覚醒させていく。ある意味ステレオタイプな流れとなっている。組織から逃れるために姿を隠して生活する遥。匿われた先のシスターが実は別の組織の人間であったり、米軍や警察組織など様々な利害関係者が交錯する。超能力を持つ少女が、いつの間にか巨大な陰謀に巻き込まれ、壮大な計画が実行される。なんだか、SFの定番的流れなので、安心して読むことはできるが、特別な目新しさはない。

特殊能力を持つ犬のアレキサンダー。最初から犬が何かしらの鍵となっているのはわかっていたが、結局最後まで本作では大きなポイントとなっている。犬を追い求めるハンドラー。キャラクター的には良い味をだしていたが、最後まで大きな役割を果たしていた。本作が少女目線ということで、物語がスーパーヒーロー的というか都合の良い能力主義になっている。これが冒頭の物語のように、ハンドラー目線であれば、謎の能力の正体がわからないまま、ミステリアスに進んでいったのではないだろうか。

どことなく大友克洋のAKIRAを連想させる流れだ。超能力を持って生まれたために、様々な組織に利用されようとする少女。ラストの場面では、まるでAKIRAを思わせるように壮大な場面を頭に思い浮かべることができた。超能力モノとしてはこの手の終わらせ方しかないのだろう。核爆弾の解体作業や地雷撤去など、反戦の匂いがぷんぷんする本作。超能力を散々戦いに使っておきながら、ここへきて戦わない方向へとシフトしているようだ。

犬のアレキサンダーは、そこまで活躍していないが、常に脚光を浴びている。




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