殺し屋1


 2008.9.5  残酷シーンがギャグになる 【殺し屋1】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
グロテスクな場面でも漫画と映画とでは与えるインパクトが異なってくる。漫画ではたいしたこと無くても、それが映像として描かれるとかなり強烈なものがある。内蔵が飛び出し、ぶら下がり、顔の皮が壁に張り付くという衝撃描写。しかし、その行き過ぎた残酷さも、突き詰めればギャグになってしまう。クソまじめに描こうとすればするほど、激しい暴力描写と残酷描写が面白場面として浮かび上がってしまう。物語のトーンは暗く、救いようのない話のはずだが、登場人物たちのふざけた行動により、それらが中和され、いつの間にかすっきり楽しく見入ってしまう。原作と微妙にトーンの違う俳優を使ったのも効果的なのだろう。イチの気持ち悪さは際立っているが、垣原のインパクトがすべてにおいて勝っている。

■ストーリー

安生組の組の組頭であり究極のマゾ人間である垣原(浅野)は、自分をいじめてくれる組長の拉致失踪を追ううちに、究極の弱虫ヘンタイ殺し屋イチ(大森南朋)の存在に気づき、心をときめかせていく。

■感想
原作を読んだときは衝撃を受けたが、その圧倒的な残酷描写に、どこか惹かれるものがあった。本作も同様に、残酷描写は突き抜けている。そして、現実離れしたありえない展開も突き抜けている。漫画では踵に付けた刃で人を真っ二つにすることに違和感は感じなかったが、実写になると、とたんに子供だましに見えてくるから不思議だ。変にリアルさを追求するのではなく、漫画をそのまま実写化していることで、不自然さを超越した何か特別なもののように感じてしまった。

物語のトーンはシリアスで決してお笑いに走っていない。しかし、登場人物たちの異常さがユーモアをかもし出し、平然と語る異常な言葉もギャグとしか捕らえようがなくなってくる。特に結末間近に登場する双子兄弟は、その存在自体がギャグでしかない。垣原とのめちゃくちゃなやり取りも面白いが、双子が登場したことにより、お遊び要素が倍増している。その結果、一部のヤクザ映画さながらな登場人物たちが邪魔になってくると、すばやくイチに殺されてしまう。最後の垣原の結末はちょっと物足りなかったが…。

随分昔の作品なので、内容を忘れていたが衝撃と共に段々と思い出してきた。それに伴って、登場人物たちのイメージがだいぶ変わっていることにも気づいた。物語の鍵を握る”じじい”にしても、”井上”にしても見た目はまったく違う。ある意味、漫画版ではそのビジュアル的な変態度も加味されていたので、その二人に関しては随分と普通になってしまったなという印象はある。長大な原作を二時間でまとめ上げようとした関係上、かなり急ぎ足の部分もあり、キャラクターを掘り下げるということが足りないのもあるが、それでも十分に原作の面白さを表現できていると思う。

はっきりいえば、かなりグロテスクで見る人を選ぶ作品だろう。原作を読んでいなければ、まったく面白さを理解できなかったかもしれない。まずは原作を読んでからだ。



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