告発のとき


 2009.6.17  強烈なメッセージ性 【告発のとき】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
戦争から帰ってきた息子が行方不明となる。父親の知らない息子の姿。戦場から戻ってきた息子が持っていた携帯カメラの中に収められていた映像とは…。現代のアメリカにおけるイラク戦争の是非を問う。というよりも、戦争の是非を問うような作品かもしれない。戦場へ出向くということはどういうことなのか。そこで経験した者しかわからない闇。本国に帰ってきてからも、引きずる何かがある。ある意味ミステリーっぽくはあるが、小出しにされたヒントをたどっていくよりも、戦場へ向かう兵士たちはどうなっていくのか。正常ではいられない何かというのをヒシヒシと感じてしまった。元軍人であるハンクであっても、現代の戦場はまったく理解できないのだろう。結末は流れるように、ショッキングな出来事を中和していく。なんだか後味はよくないが、考えさせられる作品だ。

■ストーリー

2004年11月1日、ハンク・ディアフィールドの元に、息子のマイク・ディアフィールドが軍から姿を消したという不穏なニュースが告げられる。軍人一家で育った息子に限って、無許可離隊などあり得ないと思ったハンクは妻のジョアンを残し、息子を探すために帰還したはずのフォート・ラッドへ向かう。地元警察の女刑事エミリー・サンダースが彼の捜索を手伝い、一歩一歩真実を解き明かしていくのだが、そこには父親の知らない息子の"心の闇"が隠されていた。そしてこの事件に裏に潜む真実は、ハンクがこれまで信じてきていた全世界を揺がすほどの衝撃的な事実となる。疑うことなく抱き続けた自らの信念を根底から覆される時、人はどう真実と向き合い、どう答えを出すことができるのか…。

■感想
ハンクが自らの経験をいかし息子を探し出そうとする。元軍人でもあるハンクは国に誇りを持ち、息子のこともすばらしい息子だと信じている。そんなハンクは息子を探すうちにある真実にたどりつく…。戦争のうわべだけしか知らない人々たちに、戦争の真の恐怖と、異常心理状態を伝えようとする作品。ハンクの実直で几帳面な姿と、最初は非協力的だった女刑事。女刑事は常識的な見解を示しながらも、マイクの異常性ということにはまったくいきつかない。父親であるハンクはかすかに感じながらも、信じることができない。一つの事件がこれほど多方面に影響を与えるのか。衝撃的な場面が登場し、心には強く印象に残っている。

マイクの変わり果てた姿を見てからのハンクの行動は、何かに取り付かれたようだった。的確に分析しつつも、かなり独断専行する。勘違いによって先走りすぎる場合もある。協力的なマイクの戦友たちに、好感をいだきながら、犯人を捜そうとするハンク。息子の真実の姿が見えてきていながら、それを信じることができないハンク。ハンクの心の葛藤が手に取るようにわかる場面がいくつかある。自分も軍人であった経験から予測するが、時代の違いから、マイクのことをなかなか理解できない。ハンクの顔つきが、最初と最後ではまったく別人のようになっている。温和な表情が、いつの間にか悲しみと怒りが入り混じった表情を常に浮かべているような気がした。

現代の戦争への警告か。本作を見たアメリカ国民はどう思うのだろうか。息子を戦場に送り出している親たちはどう思うのか。虚構として、自分たちには関係ないことだと言えるのか。報道などでは、本作と似たようなことが当たり前のように戦場でおこなわれていたことは、周知の事実。戦争に対して明らかに拒否的な見方をしている本作。誰でもハンクになりえるし、マイクになる可能性もある。戦争がなくならないかぎりはどのようにでもなる。タイトルの告発というのは、もしかしたら、国民に対して告発しているのかもしれない。アメリカ国民でなくとも、何かを感じずにはいられない作品だ。

強烈な後味を残す作品だろう。



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