記憶の棘


 2010.8.30  焦らされるミステリー 【記憶の棘】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
心臓発作で亡くなった夫の生まれ変わりという子供が目の前に現れたら…。子供が誰も知らないはずのことをペラペラと話しだす。ミステリアスで本当に生まれ変わりなのかと思わせる流れ。誰もが疑いながら、次々と過去の思い出を語る子供を、誰もが信じずにはいられない。物語は、シェーンが本当に生まれ変わったのかということよりも、子供の存在によって周りが変わっていく様を描いている。心変わりし始めるアナ。シェーンの親友夫婦がやってきたとき、新たな事実が明らかとなる。非常にゆっくりと流れる時間の中で、先が気になる観衆を焦らすような流れ。ある程度の理由が示されているが、すんなり納得できるものではない。オチが曖昧なままだが、ミステリアスな雰囲気はすばらしい。

■ストーリー

10年前に心臓発作で愛する夫・シェーンを失ったアナ。心の傷を癒すため、何年も待ち続けてくれた男性・ジョセフとの婚約を決意する。しかしそんなある日、見知らぬ少年が彼女の前に現れ、こう告げる…。「僕はシェーン。君の夫だ」。

■感想
子供が夫の生まれ変わりなのか。観衆はアナの思いが変化するのと同じように、子供が本当に生まれ変わりかが気になることになる。アナの家族が疑いを持ち、様々なテストをするがそれらをことごとくクリアし、もはや生まれ変わりとしか思えなくなる。見ていて爽快なのは、義理の弟や母親やメイドが何かを言っても、あっさりと答えを返す場面だ。飄々とした表情の、特にその視線には人を釘付けにする力がある。この少年の演技が、本当にシェーンの生まれ変わりではないかと思わせている。

子供をシェーンの生まれ変わりだとアナが思い始めると、そこからはアナの家族の問題が浮き彫りになる。婚約者であるはずのジョセフとの関係や、法律的な問題。アナ一人だけが突っ走り、家族はアナの目を覚まそうとする。シェーンの生まれ変わりという子供の、何者も寄せ付けない雰囲気と言葉遣い。アナでなくとも、ここまでしっかり答えられると信じないわけにはいかない。ミステリアスな雰囲気が強く、本当に生まれ代わりなのか、それとも何か裏があるのか、常に考えて見てしまう。

オチはある。子供が生まれ変わりかどうかという答えも出されている。ただ、その答えを見て、すべて納得できるとは思えない。誰も知らないことを子供が知っていた理由。シェーンの親友である男と出合った瞬間の親友の言葉。最後までそのミステリアスな雰囲気から抜け出すことはない。ゆっくりとした時間の中で、特に人物の表情を長写ししている。そのため、ミステリー的に先を早く知りたいと思う観衆をあざ笑うかのように、物語はゆっくりと進んでいく。このあたりのじらし方はすばらしいかもしれない。

中盤までの先が気になる展開はすばらしい。



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