奇術師フーディーニ


 2010.11.16  霊能者は存在するのか 【奇術師フーディーニ】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
実在した奇術師を描いた作品。面白いのはフーディーニが超能力を持っているのではなく、肉体を鍛え、その結果超人的なマジックができているということだ。霊能力を信じないフーディーニが霊能者たちの正体を暴こうとする。霊能者が実は綿密な調査によって成り立っているというタネを明かしている本作。フーディーニとメアリーの淡い恋愛模様と、メアリーの娘であるベンジーとの関係など、複雑に絡み合う人間関係が、物語を面白くしている。フーディーニとメアリー親子の関係がよくなり、これから幸せな生活が待っていると思わせながら、最後は物悲しい終わりとなる。霊能力にはタネがあると思わせながら、最後にはその霊能力によって未来が予言されてしまう。これが実在に起こったこととしたらかなり衝撃的だ。

■ストーリー

偉大な奇術師フーディーニ(ガイ・ピアース)は、他界している母の“最期の言葉”を言い当てた者に高額の賞金を与えると宣言する。これを聞きつけた、いかさま霊能者のメアリー(キャサリン・ゼタ=ジョーンズ)は、娘のベンジー(シアーシャ・ローナン)と共謀し、“最期の言葉”をあらゆる手段を使って入手しようとする。しかし、フーディーニにはシュガーというマネージャーが付きっきりで、なかなか計画がうまくいかない。

■感想
他界した母の最期の言葉を知りたいフーディーニ。そのためまったく信じてはいないが、本物の霊能者を探し出そうとする。最初に、霊能者というのは綿密な調査によってそれらしく見せているというのが、メアリー親子によって描かれている。これが非常に秀逸で、一見とんでもなくふざけているように思えるが、観客たちはメアリー親子を信じきってしまう。ある種、刷り込みというのもあるのかもしれないが、強烈な霊能力を持っているという前評判があれば、ちょっとしたことでも、さもそれらしく信じてしまうのだろう。非常に群衆の心理をうまくついた部分だ。

偉大な奇術師であるフーディーニが肉体を鍛え、絶え間ない努力によって奇術を披露している。スマートにすまし顔でなんでもあっさりとやり遂げてしまうというのがマジシャンのイメージだが、フーディーニはその肉体によって信じられないことをやり遂げてしまう。現実主義で努力によって地位と名誉を手に入れたフーディーニと、いかさまで成りあがろうとするメアリー親子。正反対のように思えるが、意外なほど馬が合い、メアリーとフーディーニが恋に落ちる。フーディーニの葛藤と、母親の最後の言葉をめぐる攻防。いったいこの後どうなるのかというのは、誰にも想像はつかないだろう。

ラストには悲しげな物語が待っている。ベンジーが魅せた特殊な力の正体は不明のまま物語は進んでいく。メアリー親子の対象者を調査することによる霊能力を描くことによって、霊能力は存在しないという流れになっていたが、そこから一気に物語りは不思議な方向へと動いていく。フーディーニとの関係が修復され、メアリー親子との幸せな生活が待っていると思われた矢先、フーディーニに不幸がおとずれる。ベンジーの言葉というのがすべてを予言していたように描いているが、それが真実かどうかはわからない。ただ、フーディーニという世紀の奇術師が存在し、不幸な最後を迎えたというのはすべて真実なのだろう。

裏の裏をかくようで面白い。



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