カポーティ


 2010.4.8  「冷血」が読みたくなる 【カポーティ】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
知ってはいたが作品を読んだことがない作家カポーティ。どのような人物でどういった性格だったのかは、本作を見ればすぐにわかるだろう。ちょっと人とは違う特殊な話方と、その描写はないが同性愛者なのだろう。すでに売れっ子となった後、「冷血」という作品を書くにいたるまでが描かれている本作。事件の周辺を取材し、加害者の内なる本心を探ろうとする。作品にかける情熱と、いつのまにか加害者の一人であるペリーに取り込まれているかのようなカポーティ。作品を完結させるためには、ペリーたちになんらかの裁きが下されなければならない。そうなった時、今までペリーたちを生かすために協力的だったカポーティがどういった行動をとるのか。本作を見ると、俄然「冷血」という作品を読んでみたくなる。

■ストーリー

1959年、カンザスの田舎町で一家4人が惨殺される事件が発生。作家トルーマン・カポーティは、事件にかつてない好奇心をそそられ、死刑判決を受けた被告人ペリー・スミスに近づく。6年間に及ぶペリーへの取材を経て、カポーティは衝撃の作品を描き上げた。その名はーー「冷血」。しかしその後、彼は一冊の本も完成させることはなかった…。

■感想
「ティファニーで朝食を」で有名なカポーティ。その作品はまったく読んだことがない。しかし、本作を見たことで間違いなく「冷血」は読んでみるだろう。ずんぐりむっくりとした容姿と強烈な高い声。そして、同性愛者。すでに売れっ子作家となり、セレブな生活を楽しんでいる時期から始まる本作。カポーティが、興味を示した事件を調査し情報収集していく描写は面白い。カポーティという作家についてほとんど知らなかったが、キャラクターとしてかなり特殊だが、ユーモアがあり、相手に対して警戒心を無くさせる力があるように思えた。

カポーティが事件の加害者であるペリーと相対する場面。物語の流れとしてはペリーの生い立ちの不幸から、事件を起こさなければならない何かがあったように思わせている。しかし、実際には無軌道で、何も考えていない衝動的な事件だということを知る。前半から中盤にかけカポーティがペリーに肩入れし、さらには恋する気持ちすらいだいているように思わせる。事件の真相をさぐるため、ペリーに近づきつつも、その心を知り真実を知ったときのカポーティの衝撃。「冷血」という作品がどのような作品なのかわからないが、苦しみぬいた末に書き上げたすばらしい作品なのだろう。

人によっては平板で、まったりとした物語と感じるかもしれない。衝撃的な事件の結末にしても、特別な理由がないとくれば、そう感じるのもしょうがない。しかし、本作は事件の加害者に取り込まれつつあったカポーティが作品を書き上げるためにした決断と、そこに至るまでの苦悩を描いている。明るく笑い話をくりかえず反面、悩み苦しんでいたのだろう。例え殺人者であったとしても、自分の行動で人を死刑にするか、それとも延命させるのか変わってくるのはしんどいことだろう。

「冷血」を最後に作品を書くことができなくなったカポーティ。どれほどのものか、「冷血」を読んでみようと思う。



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