ジャケット


 2009.8.20  死ぬ日を知った男 【ジャケット】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
この雰囲気は好きだ。記憶や時間軸が交差するあたりもかなり好みかもしれない。冒頭の、湾岸戦争で一度死んだという部分も興味を惹かれた。作品全体に流れる雰囲気は、とても暗く、どこか人を陰鬱な気分にさせる何かがある。精神的な病とみなされ収容された施設では、とんでもない治療をさせられる。極限状態から未来が見え、そして自分の死ぬ日を知ってしまう。未来の出来事を、現実世界の人間に知らせ、それがだんだんと伝わっていく様は心地よい。未来に行けば、現在は過去となる。タイムパラドクス物として定番なのは、過去は変えられないということだが、本作は都合の良い部分はあっさりと変えられてしまう。しいて言うならそこが気になった部分だろうか。

■ストーリー

ある日ジャックは警官殺しの罪で逮捕され、施設に収容後、拘束衣を着せられて隔離される(担当するのはクリス・クリストファーソン演じる医師)。その後ジャックは未来へ行き、不思議なウエートレス(キーラ・ナイトレイ)と出会う。過去が見え始めるが、この謎を解かなければ4日以内にジャックは死ぬ運命にあることが分かる。

■感想
湾岸戦争で頭に銃撃をうけ、記憶が欠落するという症状は、のちに未来を見ることができる特殊現象の前ふりでしかない。記憶が欠落するということは、後半になるとほとんど出てくることがない。ある特殊な状況下になると未来が見える。これは制約条件として重要なことなのだろう。ジャックが見てきた未来が本当に真実なのか、それをなぞっていく部分はとても興味深かった。未来から見れば過去である現在の状況を未来から予測し、行動するジャック。過去が変わらないように、現在は未来で聞いてきたとおりになっていく。この絶妙な時間軸の交差は、真剣に見ていないとわけがわからなくなる。

集中しなければならないのは、未来と現代の明確な変化がないからだ。画面から漂う雰囲気は、現代も未来もまったく同じ。おそらく最初はその錯覚を利用して、観衆を混乱に落としいれ、徐々に明らかになる事実から、驚きを与えようとしたのだろう。その策略にまんまとはまりこみ、未来と現代の微妙なつながりを楽しみながら見ることができた。未来で運命的な出会いをするジャックとウエートレス。そこに必然性はなく、ご都合主義に感じるが、出会わなければ物語が始まらないのでしょうがないのだろう。

記憶が欠落する症状が後半から一切でなくなったり、都合の良い部分だけ、未来を変えることができたり、気になる部分は多々ある。それでも、未来を見てきたジャックが、復讐や自分に協力させるために、現代の人々に未来のことや、個人が秘密にしていることを暴露するくだりはよかった。現代の人々の見る目が変わっていく様が良くあらわれていた。精神的な問題を抱え、妄想でしかないと言い切る人々。観衆はそれにつられるように、いつまでもこのジャックの能力が妄想ではないのかという思いは捨てきれないでいる。そこが、物語の鍵となっている。

タイムパラドックスのルールを無視したような作品だが、面白いのは確かだ。



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