イノセント・ボイス~12歳の戦場~


 2009.8.19  生きるための決断 【イノセント・ボイス~12歳の戦場~】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
実体験の物語とわかると衝撃だ。12歳の少年が徴兵におびえ、日々生き残るために奔走する。夜、眠っていると突然銃撃戦が始まり、家の中にまで兆弾が飛び込んでくる。流れ弾に当たっていつ死ぬかわからない状態。政府軍とゲリラの戦いのど真ん中で生活する少年の日々。ゲリラであろうと政府軍であろうと、いったい何のためにこんな戦いをするのか。12歳の少年を、強制的に徴兵することに何の罪悪感も感じないのだろうか。少年たちは、徴兵におびえながらも、子供らしい笑顔を見せ友達同士で遊んだりもする。さらにはデートらしきことまで。激しい内戦と子供たちの笑顔。同じ場所で起こっていることだとは到底思えない映像だ。

■ストーリー

1980年代、激しい内戦下の中米エルサルバドルで少年時代を過ごした青年が、13歳で亡命するまでの実体験を綴った真実の物語。少年の視点で描かれる内戦下にあった国の生活、政府が掲げた徴兵制度…。少年は銃弾の嵐の中で未来に何を見るのか。家族を守るため、生きるために少年はある決断をする!

■感想
エルサルバドルの内戦がどのようなものかよくわからない。12歳の少年が政府軍に徴兵される状況だったのだろう。日々の生活では、外出禁止時間があり、子供たちは好きなだけ外で遊ぶことができない。夜眠っていても、銃弾が飛び交う中で眠るしかない。当然、流れ弾に当たって負傷する村人もいる。こんな状況下で、なぜ逃げ出さないのだろうか。村の人々は、そこに根付き、生活をしなければならない。戦争だからといって疎開できるのは、一部の裕福な人だけなのだろう。

激しい戦闘描写は目を見張るものがある。授業中の学校にまで政府軍が押し寄せ、徴兵していく。戦時下ではどんな理不尽なことでも、軍のいうとおりにしなければならない。父親が失踪した少年は家族の大黒柱になろうとする。12歳の少年の、少年らしい姿が垣間見えたかと思うと、信じられないほど戦争慣れした表情も見せる。バスの運転手の手伝いをして、小遣い稼ぎをしたり、女の子とデートのまねごとをしてみたり。少年は少年らしい笑顔をふりまいているのが一番自然だと思った。

冒頭の場面に通じる、結末間近のシーンは衝撃的だ。戦時中はどんなことがあろうとも、たとえ12歳の少年だったとしても、ゲリラは容赦なく始末される。雨の中、兵士に連れられて歩く姿は、本当に現実のことなのか、漫画の世界ではないのかと疑ってしまうほどだ。少年は生き残るために亡命する。幼い弟と姉、そして母親を祖国に残して…。この年代ではまだ家族が恋しいはずなのに、少年は12歳とは思えないほど精悍な顔つきになっている。死の直前までの衝撃的経験が、少年を変えていったのだろう。

実話だということに、なにより衝撃を受けた。



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