イングロリアス・バスターズ


 2009.11.25  コメディではない残酷描写 【イングロリアス・バスターズ】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
タランティーノらしい作品だ。CMなどで煽られているような、笑える要素はほとんどない。笑いを期待して見るべき作品ではないだろう。歴史的事実を無視した展開。バスターズの活躍に心躍らせて見るのか、もしくわ、ドイツ軍を罠にはめていくユダヤ人の復讐劇を楽しむべきか。ドイツ軍の将校たちは、みなよい味をだしている。残虐で冷酷無比。アルド中尉率いるバスターズが善とは思わないが、相対的にそう見えてしまう。キャラ的にはブラピのアルド中尉よりもランダ大佐の方が印象深い。ラストの映画館の場面でも、一人生き残ろうと考えるランダ大佐。残酷描写の中に、ランダ大佐のにやけた表情と、アルド中尉の飄々とした表情。二人がいることで、かろうじてシリアス路線からはずれているような気がした。

■ストーリー

1944年6月、ドイツ占領下のフランス。映画館主のミミューはドイツ軍の英雄フレデリックに言い寄られ、挙げ句にナチスのプロパガンダ映画をプレミア上映させられることになった。その事実をつかんだイギリス軍はナチス諸共映画館を爆破すべくアルド中尉率いる“イングロリアス・バスターズ”を動員し、スパイのブリジッドと接触を図らせる。一方ナチスでは“ユダヤ・ハンター”の異名をとるランダ大佐が動き出し…。

■感想
お笑い要素はほとんどない。あるのは、残酷な現実と、ドイツ軍が無残にやられていく姿だけだ。冒頭から徹底的にドイツ軍のユダヤ人迫害を印象付けている。そして、ナチスの悪を際立たせ、相対する人々を強制的に善にしている。良く考えれば、アルド中尉率いる”イングロリアス・バスターズ”もとんでもなく悪いのだが、その雰囲気が薄れてしまっている。やっていることは、実はナチスよりも残酷だったりする。それは、スパイのブリジッドやその他のナチスに復讐しようとしている人々すべてに言えることだ。

ナチスに復讐しようとたくらむ様々な人々が、奇妙に交錯し、最後にはそれらが一気に交わることになる。いくつかのパートに分かれており、様々な登場人物それぞれの立場が混乱しないようにしっかりと整理されている。しかし、そのせいでちょっとぶつ切りの印象を持った。流れ的に憎たらしいほどイラつかせるナチスばかりかと思ったが、実はそうではない。バーでたむろしていたドイツ軍とのやりとりでは、計算されつくした会話が非常に面白かった。バーでの最後の銃撃戦は相変わらずだと思ったが…。

物語を締める映画館でのシーンは、さすがに緊張感が高まった。ナチスに対しての怒りや憎しみというのが、はっきりと画面からにじみ出ていたが、「これはそんな映画だったのか?」と思ってしまった。もっと軽いタッチで笑いながら見る作品かと思っていた。歴史的事実をまったく無視し、うっぷんを晴らすようなラストにしたのは、どういった意図があるのだろうか。確かにすっきりはするが、後味の良いものではない。アルド中尉が最後にお笑い要素を持ってきてくれたおかげで、陰鬱な気分が緩和されたが、それでも後味は良くない。

物語全体としてはシリアスでハードだ。コメディ要素はほとんどないと言っていいだろう。



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