イン・グッド・カンパニー


 2009.12.17  年下の上司がやってきた 【イン・グッド・カンパニー】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
巨大コングロマリットが他社を買収。どこにでもあることだが、買収された結果、自分の上司が自分の息子ほどの年齢の男だった場合、どう思うのだろうか。本作ではダンが自分のプライドと、家庭とに板ばさみにされ、苦悩しながら娘がいつの間にか若い上司といい関係となり、怒り心頭という話だ。合間にはさまれるお笑い要素が絶妙だ。そうかと思うとリストラの苦悩をシリアスに描いている。やり手重役のカーターが絵に描いたようなエリートではなく、自分の立場というのをしっかりと理解し、プレッシャーに負けまいとする姿を描いていたのはよかった。買収する側もされる側もそれなりにストレスが溜まるのだろう。アメリカらしく、激しく買収を繰り返し、その結果あっさりと使い捨てにされる人々。なんだか、アメリカの企業の怖さを感じさせる作品だ。

■ストーリー

メディア関連の巨大複合企業に買収されたスポーツ誌の営業担当重役ダン・フォアマン(『オールド・ルーキー』のデニス・クエイド)は、自分の年齢の半分のやり手重役カーター・デュリエ(『アイドルとデートする方法』のトファー・グレイス)の部下となる。カーターは結婚生活が破綻したばかりだった。ある夜カーターは寂しさを紛らわすためにダンの家へ行き、ダンの娘アレックス(『ロスト・イン・トランスレーション』のスカーレット・ヨハンソン)と出会う。2人はすぐに意識しあい、のちに街でばったり出くわしたのをきっかけに付き合い始めるが、ダンには知られないよう慎重にふるまう。

■感想
本作の流れは日本企業には当てはまらない。買収され若い上司がくるこがあっても、解雇というのはない。せいぜい地方転勤が関の山だろう。新たに古株たちがてぐすね引いて待っている部署のトップとして君臨する気持ちは、どんな気分なのだろうか。コーヒー中毒となり、震える手を沈めるのに苦労する。周りのプレッシャーに負けまいと人一倍仕事をし、結果を出す。買収される側は、当然解雇におびえながら、買収する側は、お手並み拝見という視線から、自分の実力をアピールしなければならない。随分と厳しく、そして胃が痛くなるような場面が多数ある。

自分の親よりも年上の部下の娘に恋してしまう。禁断の恋だとは思わないが、上司部下としては、ただでさえ気まずいのに、さらに気まずくなる原因を提供することになる。ダンが転職活動をこっそりするのもうなずける展開だろう。やってられないという気持ちから、衝動的に辞めるわけにはいかない。奥さんのおなかには新たな生命がやどり、娘たちは金がかかる。こんな状況は日本でも良くあることだろう。プライドを捨て、カーターの右腕として仕事をするダンには、なんだか日本的なザ・サラリーマンの姿を見たような気がした。なにも買収に限らず、この手の話はどの場面でも起こりそうだ。特に自分にあてはめて考えた時には、思わず苦しくなってしまった。

買収につぐ買収で、最後は思わぬ結果となる。カーターの境遇を考えると一番同情すべきなのかもしれない。それにしても、ここまで流動的なのは映画だからということとしても、あっさりと解雇されるというのは、真実なのだろう。こんな状況であれば、仕事に対して真剣味は増すかもしれないが、どこかギスギスした常に高ストレス状態となるような気がした。そんな状態であれば、安心して仕事もできないだろう。さらりとしたコメディチックな流れの中に、家庭を持つ男がリストラされるという苦悩を切々と語っている。おそらく、今、現実にどこでも日常的に起こっていることなのだろう。

自分がこうなったら、と思うとかなり胃が痛くなる。



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