インベージョン


 2010.11.25  無表情なウィルス感染者 【インベージョン】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
地球外生命体のウィルスによって混乱する世界。このウィルスに感染した人々の代わりようが微妙なところがポイントだろう。見た目にもわかりやすい怪物になるならまだしも、見た目まったく変わらず、表情だけが無表情となる。まるでゾンビのようにワラワラと正常な人々を追いかけるウィルスに感染した人々。一晩眠ることにより発症するというのが、物語を面白くしている。キャロルが逃げ惑う中、信頼した仲間と思われたベンすらもウィルスに犯されているのかもしれないという恐怖。無表情の人々が街中をただまっすぐ前だけを見て歩く姿はかなり異様だ。キャロルの息子だけが、ウィルスに耐性があり、重要な役割をするあたり定番的だ。ウィルス感染の見た目があまり変化しないというのは、メリハリに欠けるが別の怖さがある。

■ストーリー

地球外からやってきた謎の生命体。それは眠っている間に人間の習性を変異させ、次々と魂のないレプリカントを生み出していく。ワシントンD.C.の精神科医キャロル・べネル(二コール・キッドマン)と同僚のベン・ドリスコル(ダニエル・クレイグ)は、原因をいち早く究明しウイルス拡大の阻止に乗り出す。生き残る術はただ一つ、決して眠らないこと。誰一人信用できない悪夢のような状況の中、二人はウイルスの侵攻を食い止めることができるのだろうか

■感想
最初は何気ない一言から始まり、旦那が別人のようだとか、息子が理解できないなど、精神科医であるキャロルの下に持ち込まれる相談が、うまい具合にウィルス感染と絡んでいるように思わせている。地球外生命体の恐怖というのは、まぁありきたりかもしれない。ウィルスに感染するというのもよくある話だ。本作が一つだけ決定的に違うのは、見た目の変化がほとんどないということと、一晩眠らないと発症しないということだ。未知のウィルスの恐怖はその感染源と発症後の症状なのだが、眠れない辛さを考えると、あっさりウィルスの軍門に下ってもよいのではないかと思ってしまった。

ウィルス感染によって見た目上変化がなくとも、若干の違いはある。それは感情がなくなるということだ。そのことを逆手にとり、ウィルス感染のフリができるというのは思わず笑ってしまった。無表情にまっすぐ前を向いて歩いてさえいれば、周りのウィルス感染者に怪しまれることはない。なんだかこのあたりは、非常にアナログというか感染方法がウィルスを直接体に浴びるしかないので、このようなパターンになったのだろう。なんとなくだが、ゾンビが噛み付くことによってゾンビ化していくのに似ていると思った。

ウィルス感染者たちは感情がなくなり争いごともなくなる。テロがなくなり、戦争もなくなる。何の変化もなければ、いっそのことウィルスに感染するのも良いのではないかと思えてしまう。ただ、最終的なオチとして、感染中の記憶がまったくないということを考えると、人格もなくなっているのだろう。ウィルス感染モノとしては、見た目のインパクトが初期段階だけというのはかなり特殊だ。それを逆手に取り、なんてことない日常に、実はウィルス感染者が潜んでいるという、ジワジワくる恐怖感はある。

感染の恐怖より、無表情な人々の方が恐ろしい。



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