2010.1.13 最もIWGPらしい作品だ 【灰色のピーターパン-池袋ウェストゲートパーク6】
■ヒトコト感想
本作に収録されている短編はどれも印象深いものばかりだ。表題作でもある「灰色のピーターパン」では、Gボーイズやヤクザたちでさえも扱いきれないマッドドックが登場し、マコトを苦しめる。久しぶりに、このシリーズを読んでドキドキした。盗撮画像を売りさばく小学生というのもすごいが、いつものように、絶対的な善悪で判断するのではなく、あくまでもマコトの基準での判断だ。そのため、盗撮小学生は良くて、それを脅す高校生は悪いという流れになっている。その他の短編でもそうだが、このマコト基準というのが物語を面白くしている。とんでもないことをやりながらも、そこにはマコトなりの正義がある。この尖がった感じが良いのかもしれない。
■ストーリー
池袋は安全で清潔なネバーランドってわけじゃない。盗撮画像を売りさばく小学5年生が、マコトにSOSを発してきた。“まだ人を殺してない人殺し”マッドドッグ相手にマコトの打つ手は?
■感想
本作のどの短編も楽しんで読むことができる。相変わらずのマコトの自虐的な会話を楽しみ、事件を鮮やかに解決していくさまを読む。マコトの事件解決のスタンスは、常に依頼者からの要求が全てで、その依頼を達成するために用いる手段に対しては、特別な考えはない。中にはマコトがやっていることの方が問題ではないかと思えてくるものもあるが、それでも物語中ではサラリと流されている。クールな視点で描かれているだけに、余計にそう感じるのかもしれない。
兄の復讐を誓う少女の「野獣とリユニオン」は、誰が本当に悪いのか、被害を受けた者がその怒りを向ける先をどうすればよいのか悩む作品だ。今までのシリーズ的考えならば、わりとあっさり、目には目をという感じで復讐を遂げていたのだが、本作は違っていた。ラストは少しありきたりだが、それでもタカシを絡ませながら、すべてをうまくジャッジしているのはすばらしいと思った。ここでもGボーイズの威光に頼っている感じもするが、マコトの裁き方は万人が納得するようなやり方なのだろう。
本作で最も印象に残っているのは「池袋フェニックス計画」だ。相手が超大物ということもあり、マコトだけの手におえるものではない。それでも必死に事態を打開させようと、様々な手をうってくる。いつものとおりサルやGボーイズを駆使して、超大物と対決する。客観的に見ると池袋フェニックス計画は良いことのように思えるが、マコト側から見ると、自分たちの仲間が池袋から追いやられるということで、悪いことになるのだろう。この「自分たちさえ良ければ良い」というとんでもない理論をかざしているようだが、それがマコトらしくて良い。全ての人々が幸せになるように、なんてことをマコトが考えだしたら、まったく面白さを感じないだろう。
IWGPらしい短編集ということだろう。
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