骨音-池袋ウェストゲートパーク3 石田衣良


2009.12.16  強烈な世界で一番早い音 【骨音-池袋ウェストゲートパーク3】

                     
■ヒトコト感想
テレビ版のスペシャルで最も印象に残ったのは本作の骨音をベースとした作品だった。どんな音よりも早い音、なんて言われてもまったくピンとこないが、本作を読むとそのすさまじさがなんとなくだが理解できたような気がした。いつものマコトとGボーイズの王様タカシ、そして池袋で繰り広げられる事件。一つ一つはそこまでインパクトはないが、サラリと読め、気分がすっきりする。特にタカシが良い味をだしているのだろう。ヤクザや警察組織に対しても臆することなく対応していく。そのクールなまでの活躍に、壮大なカタルシスを得ることができる。なんとなくだが、タカシが絡めば絶対にうまくいくような思いがした。マコトだけでは痛い目に合いそうな、どこか不安定な部分がある。それがまた魅力なのかもしれない。

■ストーリー

世界で一番速い音と続発するホームレス襲撃事件の関係は?池袋ゲリラレイヴで大放出された最凶ドラッグ「スネークバイト」の謎とマコトの恋のゆくえは…。

■感想
骨音は、読んでいる間中、テレビ版の映像が頭をよぎった。かなり昔に見たはずなのに、思い出すということはそれほどインパクトが強かったのだろう。原作としても当然すばらしく、世界で一番早い音と言われて、どんな音を想像できるのか。まさか骨の折れる音だとは、普通では考えつかないだろう。マコトが不可解な事件を調べ、大詰めになるとGボーイズとタカシの協力を得る。このパターンはいつもと同じだが、それでも新鮮さを感じるのは何故だろうか。すでに過去のものとなりつつギャングに、新しさを植えつけているのは、Gボーイズのメンバーがほとんどしゃべることなく、タカシがクールな言葉で代弁しているからだろう。

本作では「骨音」と「西一番街テイクアウト」が強く印象に残っている。残りの二つは悪くはないが、なんだか無理矢理新しさを出そうとしているような気がした。「西口ミッドサマー狂乱」などは、Gボーイズが活躍し、大掛かりな演出をしているが、どうも無理矢理ミステリーに仕立て上げようとしている気がした。ドラッグやレイブなどギャング風味が強くなっているにも関わらず、仕掛け的に結構単純だったのが一番気になった部分かもしれない。その他の作品が強く印象に残っているために、相対的には低くなるが、それでも十分に楽しめたことは確かだ。

「西一番街テイクアウト」では、かなりご都合主義的というか、仲間内で助けるために好き勝手な理論をマコト側がふりかざしている。普通ならば、あれ?と思うはずだが、逆にこれがよかった。別にマコトやGボーイズたちが正義の味方であるはずもなく、ただ知り合いを助けるために好き勝手なことをする。世界平和やエコのために行動するのではなく、知り合いを助けたいために、自分勝手な理論をふりかざす。ここまで徹底していれば、もはや何も言えなくなってしまう。ラストにはしっかりとサル、マコト、タカシそれぞれのタイマンが描かれていたので、それもよかった。

高いレベルで毎回違ったテイストの作品を作り出せるのはすごいことだ。



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