ICO-霧の城ー 宮部みゆき


2009.2.22  ゲームの中の世界だ 【ICO-霧の城-】

                     
■ヒトコト感想
ゲームを原案とした本作。ゲームの中に登場するさまざまなイベントをそのまま作品の中にいかしているのだろう。正直言うと、ゲームをやっていなければ楽しめない部分もある。ゲームに登場する城を文章で描写するというのは相当難しいと思う。独特な雰囲気はゲームをやらなければ味わえない部分だろう。物語として読むと、不思議でどこかファンタジーな雰囲気は理解できる。しかし、それはゲームを見たことがあるからなのかもしれない。本作とゲームの内容はほとんどリンクしていないのだろうが、どうしてもゲームと混同して考えてしまう。ゲームのファンならば間違いなく読んだ方が良いだろう。頭の中には新しい世界が広がることは受けあいだ。ただ、ゲームをやったことがない人にとっては…、楽しむのは難しいかもしれない。

■ストーリー

邪悪な力を持つ霧の城は角の生えた子を生贄として求めていた。イコはしきたりに従い、霧の城へ。そこで檻に囚われた少女を発見したイコは、彼女を助け出すがその手を握ると何故か彼の頭の中に様々な幻像が…。不思議な力を持つ少女・ヨルダは何者なのか?そして囚われた理由とは?運命に抗い、謎が渦巻く城からヨルダとともに脱出するため、イコは城主と対決する。

■感想
ゲームはやったことはないが、確か特殊なゲームだったと思う。その特殊さが物語りに存分にいかされているのはよくわかる。霧の城の中で一人の女の子の手をとりながら城を進んでいく。ドラクエやFFなどと違い、戦いをメインとはしていない。そんなゲームを原案としているだけあって、普通の作品とはちょっと違った印象がある。なぜイコがヨルダの手をつかみ、城から連れ出そうとするのか。その理由と、イコが霧の城へと入るきっかけから細かく描かれている。このことにより、物語の深みは格段に増してきた。ゲームをやる上ではとても大きな助けになることだろう。

ゲームの謎解きに直接関係するような描写はないと作者はあとがきで書いていた。ただ、ゲームの中に登場しそうな仕掛けを思わせる描写はいくつもある。仕掛けを解きながら霧の城という巨大な迷路を進んでいく。パズル的な要素が強いゲームなのだろう。事前にゲームをやっていれば本作を十分楽しむことができる。逆に本作を読んだ後ゲームをやれば、また違った楽しみがわいてくるのだろう。自分はこのあとゲームをやるつもりはないが、多少の興味はわいてきた。

本作の難しいところは、ゲームをまったくやらない人がどのように感じるかということだ。複雑な城、そして奇妙な仕掛け。それを単純に物語の一部として理解できるのだろうか。自分の読み込み方が足りないのか、城の内部の仕掛けなど、いまいち頭の中にイメージすることができなかった。イコが戦う姿や、城を走り回る姿。霧の城の由来など、作者独自の解釈を付け加えた物語は、原案をはるかに超えた濃密なものに仕上がっているのは確かかもしれない。それを純粋に楽しめるかどうかは、ゲームの世界をイメージできるかできないかにかかっている。

かなりのボリュームがあり、ファンタジーあふれる世界観に慣れていないと厳しいかもしれない。



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