2009.7.17 隠れた名作だ 【ガタカ】 HOME
評価:3
■ヒトコト感想
人の優劣は何で決まるのか。DNA差別が横行する近未来。劣勢遺伝子を持って生まれたビンセントが宇宙飛行士になるために、優秀な遺伝子をもつ若者ジェロームになりすます。人の価値が何で決まるかというと突き詰めれば本作のように遺伝子で決まるのだろう。しかし、遺伝子だけは計れない何かがある、夢に向かって諦めない気持ちがあれば、夢はかなうという非常に前向きな気分になれる作品だ。才能があるないというのは幻想だ。遺伝子の優劣さえも越えた何かがあれば、人はどのようにでもなれる。優秀な遺伝子を持ったジェロームの最後の選択を見ると、遺伝子だけが全てではないと思わせられる。最後まで目が離せなく、感動する作品だ。
■ストーリー
DNA操作で生まれた“適正者”だけが優遇される近未来。自然出産で生まれ、劣性遺伝子を持つ人間は“不適正者”として差別されていた。そんな不適正者の一人ビンセントは宇宙飛行士になる夢を抱いて家族のもとを飛び出し、優秀な遺伝子を持ちながら事故で下半身が不自由となった若者ジェロームと出会う…。
■感想
ビンセントのひたむきな姿と、ジェロームの人生を悟ったような表情。独特な雰囲気の中で、近未来の強烈な遺伝子至上主義が明らかとなる。何においても、まずは遺伝子。ちょっとした髪の毛や皮膚、さらにはキスをしたときの唇についた唾液など。どんなものでもたちどころにDNAがわかってしまう。これほどはっきりとした個人認証方法はないだろう。そんなシステム化された社会で、ビンセントは夢を実現するために、優秀な遺伝子を持つジェロームに成りすまそうとする。優秀な遺伝子しかなれない職業がある。これほどはっきりとした差別はない。しかし、それが横行する近未来社会だ。
ビンセントの宇宙飛行士になりたいという熱意がものすごく伝わってくる作品だ。それと共に、優秀な遺伝子を持つはずのジェロームの心の闇もよくわかる。生まれた瞬間に、自分の未来がすべて決められたような人生に、歩む価値があるのだろうか。ビンセントは自分の目の前にしかれたレールからはずれ、新たな道を目指そうとする。それはとてつもなく不可能に近いことだが、やりとげようとする。同じようにジェロームは、車に飛び込むという方法で、目の前のしかれたレールから外れることを選んだ。この二人の絆が深まるのは当然のことなのだろう。
劣性遺伝子を持ったビンセント。にもかかわらず、本人の努力で周りから一目置かれる存在となる。ビンセントの存在自体が、遺伝子で全てが決まることへの反発となる。極度にシステム化された近未来。ビンセントの健気に努力する表情と、ジェロームの不適な笑み。独特な音楽と共に、見ているうちにその世界に没頭してしまう。観衆たちはいつのまにか、ビンセントに感情移入し、ジェロームにすら好感を持つ。遺伝子至上主義社会のほんのわずかな歪みとなったビンセントは、夢に向かって大きく羽ばたいていくのが容易に想像できた。
地味な作品だが、終始目が離せず非常によくできた作品だ。
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