フロム・ヘル


 2009.5.12  ジョニー・デップの雰囲気が良い 【フロム・ヘル】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
切り裂きジャックを元にした作品。犯人は誰なのか、そして何の目的のために…。事件を担当するアバーライン警部に特殊能力があり、事件の解決に奔走する。この手の作品では、誰が犯人なのかと、とっさに考えながら見てしまう。アバーラインが推理するものは、観衆をミスリードさせるための材料かと思いきや、意外にもアバーラインの推理そのままとなる。てっきりアバーラインが真の犯人かと深読みしてしまった。ミステリーとして見ると十分楽しむことができる。ただ、切り裂きジャックのストーリーをある程度知っている人にとっては特別な印象はもたないだろう。ジョニー・デップの格好良さと、1888年のロンドンの町並みを楽しむくらいしか見所はないかもしれない。

■ストーリー

1888年のロンドン、ホワイトチャペル。ある日、メアリと別れて歩き始めた仲間の娼婦の一人、マーサの背後に忍び寄るひとつの影があった……。同じ頃、ロンドンのアヘン窟ではアバーライン警部がアヘンの幻覚の中である殺人事件を目撃していた。路地を歩く女性、背後に迫る視線、女の顔に浮かぶ死の恐怖、飛び散る鮮血、ぶどうの房の小枝、息絶えて横たわる女の体、死体を切り刻むリストン・ナイフ……。しかし、それは単なる幻覚ではなく、現実の世界で起きていた殺人事件だった。その夜から一人、また一人と娼婦たちがナイフの餌食になっていく。そして、ついにメアリにも魔の手が忍び寄る──。

■感想
アヘン中毒のアバーラインがなぜ予知能力を持つのか、そのあたりは不明だ。そして、予知能力がたいして事件解決に役立っていない。事件は純粋にアバーラインの推理と調査によって解決へと導かれている。ただ、事件には様々な人々の思惑が重なりあい、複雑に絡み合う糸をひとつひとつ解いていくと、しっかりと糸口が見えてくる。観衆に犯人を想像させる材料は多数登場する。巧みに犯人を隠す演出もすばらしいと思う。しかし、その結果犯人があきらかとなっても、それほど驚くことはない。もっとも怪しいと思われる人物が犯人なのだからしょうがないのだろう。

アバーラインを演じるジョニー・デップは相変わらず格好いい。頭もきれ、冷静で、上司に対してもしっかりと意見が言える好人物。そのくせアヘン中毒であったり。なんだかちょっとよくわからないキャラクターだ。そんなアバーラインに対して、周りの評価はすこぶる高い。怪しげな組織や、英国王朝までも担ぎ出し、事件の真相には根深いものがあると思わせる。娼婦が次々と狙われる原因はきっちりとスジが通っており、なかなかすばらしいと思うのだが、犯人がありきたりすぎるという印象はぬぐえなかった。

最終的なメアリとアバーラインの関係はこれがベストなのだろう。アバーラインが田舎町で農業に営むなんて姿はまったく似合わない。霧深いロンドンの街中でアヘンにまみれながら、陰惨な事件を追いかけている方が似合っている。全体の雰囲気としても、ジョニー・デップの闇の部分が本作の雰囲気にあっている。やはりさわやかなキャラクターよりも、ちょっと陰があり、どこか後ろめたい思いをもつキャラクターの方がジョニー・デップには似合うのだろう。本作のアバーラインはまさに適役かもしれない。

雰囲気はとても良い。ただ、犯人は誰もが想像する人物だ。



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