2010.10.28 いつまでも色あせない感動作 【フェイク】 HOME
評価:3
■ヒトコト感想
マフィア組織に潜入捜査したFBI捜査官の物語。かなり昔に見て強烈な印象を残したので、もう一度見たが、今見てもまったく色あせない魅力と哀愁を漂わせている。実話ということはさておき、まずレフティの寂しそうな表情が秀逸だ。息子のように慕い、仲間に引き入れたドニーが実はFBI捜査官だった。そのときのなんともいえない、信じたいけど現実を見なければならない葛藤。そして極めつけは、レフティが最後に家族へ残すメッセージ代わりの行動だ。ひっそりと引き出しの中に自分の持ち物を仕舞う。家族が気付くように少しだけ引き出しを開けたままにする。細部まで語らずとも、男同士の絆と悲しい友情を感じずにはいられない。それに比べると、FBIの勲章などくそ食らえだ!
■ストーリー
単身、NYのマフィア組織に潜入したFBI捜査官ジョー。ドニー・ブラスコという潜入名で街に潜伏した彼は、ある日レフティという男に出会った。彼に息子のように可愛がられ、さらに危険な世界へと導かれてゆくドニー。そしてレフティはドニーの出現に夢を見、再び人生を掛けるが…。
■感想
すばらしい脚本をすばらしい俳優が演じれば面白くないはずがない。十年以上前の作品だが、今見てもまった色あせず、若いころのジョニー・デップの生き生きとした演技と、アル・パチーノのぼんやりとしてはいるが、虚勢を張る窓際マフィアがすばらしい。特にアル・パチーノが演じたレフティは、その表情がすばらしい。ボスに気に入られいつの間にかドニーに追い抜かれた時の寂しげな表情。駄々っ子のようにドニーに八つ当たりする暴れ方。実の息子が倒れた時の泣き顔。そして、ドニーを心底信じたいと思う悲しげな表情。ラストには、ふらりとタバコでも買いに行くかのように、死へと旅立つその表情。すべてがすばらしい。
レフティだけでなくドニーもすばらしい。特殊な潜入捜査で家族にさえも理由を明かせない生活。家族仲が不仲になり、ドニー自身もいつ正体がバレて殺されるかわからないストレスでだんだんとおかしくなっていく。このドニーの家庭と潜入先のレフティとの関係がすばらしい対比を描きつつ、ドニーのレフティに対する強い思いが画面から伝わってくる。レフティの虚勢を張る姿は、ほっとけなくさせる何かがある。ドニーはまさにこのレフティにはまり込んでいる。自分を息子のように慕ってくれるレフティを裏切ることができるのか、ドニーの苦悩は手に取るようにわかる。
ラストでは実話らしく、ドニーはFBIの幹部たちから表彰されることになる。この時のドニーの表情がすべてを物語っているのだろう。レフティがどうなったかなんてことは、当然ドニーはよくわかっており、ドニーが殺したも同然だということは作中でも語られている。レフティのぼんやりとしながらも、うだつのあがらない、いつまでも出世できないおちこぼれマフィアには、悲しみが溢れている。ドニーとレフティの関係が本作のすべてだが、マフィアの幹部たちもドニーをものすごく信頼していたことが、強く印象に残っている。すべてがレフティだけの責任ではないが、レフティの悲しげな表情が最後まで目に焼きついている。
古い映画だが、良いものはいつ見ても良い。
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