エネミー・オブ・アメリカ


 2009.6.16  情報化社会の危険性 【エネミー・オブ・アメリカ】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
日々の生活において、何気ない行動やプライベートをすべて見透かされている可能性がある。そんなことを暗示させる本作。偶然にも秘密を手に入れ、追われる身となったディーンが哀れでならない。本人が望まないまま、事件に巻き込まれ家族はめちゃくちゃにされ、人生までもお先真っ暗となる。ディーンを丸裸にしようとするレイノルズたちの行動。そんなことまでできるのか?というほど、細部にまで綿密に情報収集が可能となる。高度に発達した情報社会に警笛を鳴らすような本作。最後にはディーンの機転の利いた行動で全てがまるくおさまることになる。情報ブローカーのブリルのかっこよさが際立っているが、情報化社会の恐怖をまざまざと思い知らされる作品だ。今、自分が話している携帯が誰に盗聴されているかわからない。そんな社会になったということだ。

■ストーリー

弁護士のディーン(ウィル・スミス)は、テロ防止を名目に“通信システムの保安とプライバシー法案”を作ろうとする国家安全保障局行政官レイノルズ(ジョン・ヴォイト)が反対派議員を殺害した現場を撮影したビデオテープを手に入れたことから、家族ごと命を狙われるはめになり、情報ブローカーのブリル(ジーン・ハックマン)との接触を図る…。

■感想
本作は、まさしく情報化された社会において、権力者がその気になれば、どんなことでもできてしまうという見本かもしれない。体中に盗聴器をしかけ、ディーンの行動は衛星カメラからしっかりと監視されている。一度にらまれたら、もう逃げ出すことができない。情報ブローカーのブリルはその恐ろしさに気付いている。ある一つのディスクをめぐって国家安全保障局対、弁護士のディーン+ブリルの戦いが始まる。ある意味情報戦といってもいいのかもしれないが、逃げるディーンたちと追いかけるレイノルズたち。この図式は変わることがない。もし、こんなことが現実に起こっているのであれば、恐ろしいの一言しか言えない。もはや国家に誰も逆らえなくなるからだ。

追われるディーンも後ろめたいことがないわけではない。探られれば何かボロがでてくる。そんなディーンは自業自得といえどもちょっとかわいそうな気がした。ディーンが追われていると気付いたからといって、何ができるはずもない。ブリルがいなければ、何もできなかった。このブリルがかっこいい。決して姿を見せず、取引も仲介者を立てなければできない。その姿は謎に満ちているが、姿を現したときには…。レイノルズ対ブリルというのも見所の一つかもしれない。情報戦の巧みな駆け引き。人たび正体が知れてしまうと、もはやゲームオーバーというくらいに、正体の隠匿に神経質になるブリル。この世界ではそれも当然のことだろう。

ラストの展開は秀逸だ。全ての情報を暴露されたディーンにとって、この方法以外に、その後の生活を安定させるすべはないのだろう。冒頭の出来事がうまく絡んでいる。いくらレイノルズであっても、どんなに情報戦に長けていたとしても現実の戦いであれば、そうなんでもうまくいくわけではない。強大な権力を持つレイノルズがちょっとしたマフィアたちと対峙する。政府という脅し文句にさえ屈しないマフィアたちが、なんだかこの時ばかりは頼もしく感じてしまった。三すくみの展開とでもいうのだろうか。ラストは全てを清算するような大騒動が待っていた。このラストは気持ちいいかもしれない。

情報化社会の危険性を警告するような作品だ。



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