エネミーライン


 2010.2.17  判りやすいアメリカ映画だ 【エネミー・ライン】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
敵のど真ん中に戦闘機が墜落し、パイロットは無事脱出できるのか…。一瞬ブラックホークダウン的なものかと思っていたが、テイストは大きく違っていた。とことんまで戦争のリアルを追求したブラックホークダウンに比べ、本作は明らかにエンターテインメント性を重視している。そのため、逃げ惑うパイロットと、それを追いかける敵として、しっかりとキャラ付けされている。仲間を助けたいという想いと、政治的な思惑が交錯し、すんなりとパイロットを救出できないNATO軍。中途半端なリアルさと、後半になればなるほど強烈になる、追いかけてくる敵の個性。ラストはお決まりどおり、上官の命令を無視しても仲間を助け出そうというヒーロー的精神。いかにもアメリカらしい作品だ。

■ストーリー

アラビア海に浮かぶ米海軍の原子力空母USSカール・ヴィンソン。兵士たちは民族紛争が終結したボスニアの平和維持活動に当たっていた。クリス大尉は偵察飛行ばかりの単調な毎日に不満が爆発、レイガート提督の注意にも耳を貸さず海軍を辞めると言い出す始末だった。そんなある日、いつものように偵察飛行に向かったクリスは突然のミサイル攻撃を受け、敵陣のど真ん中に不時着してしまう。そこでクリスが見たものはセルビア人民軍による残虐行為だった。そして彼らは、目撃者であるクリスを捕まえるために執拗な追跡を始めたのだった……。

■感想
平和維持活動に参加しながらも、偵察だけの毎日に嫌気がさしているクリス大尉。そんなクリスが突然敵の真っ只中に放り出され、どうにかして逃げ出そうと四苦八苦する物語。最初に登場する戦闘機の映像は、すばらしいスピード感だ。さらには、ミサイルに追いかけられ、なんとか振り切ろうとする様は見ていて手に汗握る展開だ。戦闘機が墜落し、なんとか脱出してからもクリスの苦難は続く。ある程度予定調和的にクリスは絶対に死ぬことがないとわかってはいるが、ドキドキする。どのようにして脱出するのか、そこが本作のメインなのだろう。

政治的な思惑と、現場の意見の違い。それらをたくみに利用し、一人救出を待つクリスが孤立していく。敵のど真ん中で逃げ惑うクリス。そこに登場する敵たちが、これまた個性が強い。なんだかいわくつきの人物も登場し、よくわからないが手ごわそうな印象を残している。地雷が埋まった地帯や、ゲリラ的な人々と合流したりもする。紛争地帯ならでわのごたごたがクリスをうまいぐわいに紛れ込ませている。それにしても、ゲリラが飲んでいるのがコーラというのは、こんな場所でもアメリカの影響力があると表現したいのだろう。

ラストはザ・アメリカ的展開となる。ヒーローが崇拝されるアメリカらしく、仲間を助けるために、上官の命令を無視して危険な任務に挑戦する。おなかいっぱいになるほどのアメリカ映画で、軍が全面協力しているということもあり、アメリカ海軍をこれでもかと持ち上げている。偏屈なNATO軍の上官よりも、仲間を想い命令を無視して救出に向かうアメリカ軍空母の艦長のすばらしさばかりを強調している。小粋なユーモアを交えるのも、いかにもといったところだろうか。

ものすごく分かりやすいアメリカ映画だ。



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