チェンジリング


 2010.12.29  アンジェリーナ・ジョリーの変わりっぷり 【チェンジリング】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
実話を元にした作品。そのためドラマチックな展開で最後に劇的な結末がまっているわけではない。しかし、演出のすばらしさと優れた脚本により長時間にも関わらず飽きることなく楽しむことができた。息子が別人だと訴えるウォルターと、そんなはずはないと突っぱねる警察。この二者の対決形式と、真実がはっきりしないイライラ感が極限まで高まったかと思うと、後半ではすっきりとしたカタルシスを得ることができる。横暴な警察対、何も知らない善良な市民という対決形式に何か大きな落とし穴があるように思えたがそうではなかった。ミステリアスでありながら、現実的な結末となる。あっと驚くような結末ではないが、ストーリーの巧みさにいつの間にか惹きこまれてしまう。

■ストーリー

1928年。ロサンゼルスの郊外で、9歳の息子・ウォルターと幸せな毎日を送る、シングル・マザーのクリスティン。だがある日突然、クリスティンの勤務中に、家で留守番をしていたウォルターが失踪。誘拐か家出か分からないまま、行方不明の状態が続き、クリスティンは眠れない夜を過ごす。そして5か月後。警察から息子が発見されたとの朗報を聞き、クリスティンは念願の再会を果たす。だが、彼女の前に現れたのは、最愛のウォルターではなく、彼によく似た、見知らぬ少年だった――。

■感想
主演のアンジェリーナ・ジョリーの変わりようにまず驚いた。げっそりとやせこけ、実年齢より十歳は年上に見えた。おどおどとした表情をみせたかと思うと、焦点の定まらない目でじっと相手を見つめる。なんだかこのウォルターの病的な視線を見ると、警察のいうとおり精神に異常をきたし、その結果実の息子ではないと感じるのではないだろうかと思ってしまった。生気のない表情のはずが、唇だけはふっくらとしている。最も印象的なのは、はっきりと笑ってはいないのだが、相手に対して口角を上げほんの少しニヤリと笑ったような表情だ。何を表しているのか、この微笑の印象ばかりが頭に残っている。

警察対ウォルターの対決は、横暴なロサンゼルス市警の実状を誇張して表しているのだろう。事なかれ主義と、騒ぎになることをきらい、臭いものには蓋をしろという考え方。これほどの横暴が許されるのかと、警察組織に対してのイライラはつのる。それがある出来事をきっかけとして、一気にウォルター側が逆転し、壮大なカタルシスを得ることとなる。ただ、横暴な警察組織側にしても、それなりの理由があり、めちゃくちゃな理論を押し付けているわけではない。警察側が完全な悪だとは思わないが、本作では相対的に観衆たちのストレスのはけ口となっている。

衝撃的な出来事が起こると、それに付随して印象的な演出で物語を盛り上げている。特に裁判と公聴会が輻輳して行われる場面では、加害者、警察組織、そして傍聴する人々など、普通に描いたならばなんてことない場面であっても、巧みな演出によってドラマチックな映像となっている。ラストはやはり実話ということで、ハッピーエンドとはならない。クリント・イーストウッド作品でいうとミリオンダラーベイビーと同じような感じかもしれない。どことなく、奥歯にモノが挟まったままのような、そんな状態ですべてに決着がついたといった感じだろうか。

アンジェリーナ・ジョリーはまるっきり別人にみえる。



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