ブレイブワン


 2009.1.15  誰でも殺人鬼になりえる 【ブレイブワン】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
被害者から復讐者へと変貌するエリカ。この変貌ぶりが非常にリアルで恐ろしい。かよわい女性だったはずのエリカが変わっていく。目に精気がなく夢も希望もない表情。復讐の鬼となるわけではなく、日常の何気ない場面で遭遇すると、とたんに変貌していく。心に穴があいたはずのエリカは終始うつろな表情をしており、人生に対して目標もなにもなく、ただそこにいるだけのように感じられた。このエリカに感情移入することは難しいだろう。強烈な復讐心を燃料とするわけではなく、突発的に行動する。正義感からでもない。本作を見てまっさきに思ったのは、銃社会アメリカでは、女性であってもいとも簡単に殺人鬼となれるということだ。

■ストーリー

結婚を間近に控えたラジオ・パーソナリティのエリカは、ある日暴漢にフィアンセを殺され、エリカ自身も命を落としかける。体の傷は癒えても、心の傷が癒えることはなく、護衛のために銃を手にしたエリカは、一線を越えた時、もう一人の自分に目覚めてしまう…。

■感想
エリカが終始復讐を考えているようには見えなかった。日常の些細な場面で遭遇した出来事に、突発的に対応したことが、いつの間にか世間を騒がす出来事となる。一線を越え、もう一人の自分がでてきたようにも描かれているが、エリカは終始正常なように見えた。もしかしたらエリカの中には恋人が殺される前から、追い詰められたときにとんでもない行動を起こす素養があったのではないかと思えてきた。冒頭の残酷な場面に目を背けつつも、エリカの無表情の中に薄ら寒いものを感じて目が離せなかった。

本作の主演が若い女優ではなく、ジョディ・フォスターが演じたことでかなり印象が変わるのだろう。もともと持っている気の強さのようなものが、役にぴったりとはまり込み、違和感なく見続けることができた。これが、若く、かわいらしい女優だったとしたら…。まったくリアリティを感じることができず、ただの復讐映画として終わっていたのだろう。恋人を殺された。その後の葛藤はいろいろとあるが、それらをすっ飛ばして、その後の行動へとうつる。ぐだぐだと悲しみを描かないのも正解だったかもしれない。

本作を見ていると、エリカはいずれ正体がバレるのは確実だが、その結末がどのようになるのか、そればかりを考えてしまった。どのような形で事が露見するのか、そして、そのときにエリカはどのような思いでいるのか。ハッピーエンドにならないことはわかっていたが、結末としては一番救われた終わり方ではないだろうか。理不尽でもなく、かといって漫画的に都合が良すぎるわけでもない。日常に潜む危機をリアルに啓蒙しているといってもいい本作。見ていて常に思っていたことは、ほんの些細なズレから人はどうなるかわからないという怖さだった。

復讐を目的とするエリカの表情。それだけでも見る価値はあるかもしれない。



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