僕の大事なコレクション


 2009.12.18  コメディとシリアスが入り混じる 【僕の大事なコレクション】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
コメディとシリアスが入り混じった作品。最初の雰囲気はちょっと変わったおしゃれ映画かと思った。通訳のアレックスが語る人物紹介など、そのままコメディの走り出し方だ。さらには、超コミカルな音楽。ウクライナを連想させ、なおかつヘンテコな印象をもたせる曲調。ただ車が走っているだけなのに、この曲のせいで面白場面になっている。特に犬の表情は音楽の力が大きい。普通の犬がなんだか無性に面白く思えてしまう。そうかと思うと、後半からは一気にシリアスな展開へと移り変わっていく。あのコミカルな音楽はなりを潜め、悲惨な現実と後悔の嵐を画面から滲み出している。ここまで最初と最後の印象が違う作品もめずらしい。できるならば、最初のテンションと面白さで最後まで突っ走ってもらいたかったが、そうもいかないのだろう。

■ストーリー

ユダヤ系アメリカ人・ジョナサンは、家族にまつわる品々をコレクションする一風変わった趣味の持ち主。ある日、祖母から1枚の写真を渡され…。 かつて祖父の命を救ったという女性を探しに、ジョナサンはウクライナへ向かうのだが、現地で迎える通訳の青年アレックスが、アメリカかぶれの、これまた変な男であった…。

■感想
人種の問題は根深い。そして、日本人にはなじみがない。そのため、最初のコミカルな雰囲気が好きだった人には、後半のトーンはちょっとしんどくなるだろう。あのなんでもない犬が、ただ車のブレーキの慣性に耐え切れず、ちょっと前のめりになるシーン。もうそれだけで笑いがこみ上げてくる。前半はしつこいほど音楽で雰囲気を作り上げている。いちいちキャラクターの表情をアップにするのも、面白さを狙ってのことだろう。ジョナサンにいたっては、ほとんど会話らしい会話がない。全編とおしてそうかもしれない。絶妙な表情が笑いを誘う。それは後半のシリアスな雰囲気では、また違った印象を与えることになる。

なんでもかんでもコレクションをするということ自体が、なんだかおかしい。黒縁メガネをかけ、黒いスーツに黒いネクタイ。マジメそうに見えるがやることは奇妙。旅の仲間は偏屈なジジイとアメリカかぶれの英語が下手な青年。そして、頭のおかしな犬。すべてが計算されつくした笑いなのか、それとも意図せずして面白くなっているのか。あの、偏屈なジジイが後半にはとたんにシリアスな流れの牽引役となる。前半のイメージを引きずっていると、頭の中を整理するのにちょっと苦労するかもしれない。

ラストはなんだかよくわからないが、感動を引き起こさせる。戦争が終わったということに気付かない老婆の元へ、突然、アメリカの男がやってくる。老婆にとっては日本に黒船がやってきたのと同じくらい衝撃だったのだろう。ジジイの想いとアメリカかぶれの青年の考え。とても苦悩しているようには見えなかった。その原因は前半から続いたドライな雰囲気にあるのだろう。涙を流して悲しむのでもなく、顔を真っ赤にして怒るのでもない、淡々と過ぎる時間。最後の別れの場面でも、本作の雰囲気にふさわしく、なんの言葉もなくただ表情だけで何かを語っている。

前半のトーンが好きだっただけに、後半の変わりようには少し驚いた。



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