2010.2.25 SFの面白さを味わえるか 【ブルータワー】
■ヒトコト感想
SFとしてどの程度ハマれるかどうか。悪性脳腫瘍の影響で突然200年後の世界にタイムスリップする男。未来の世界が、塔の中での生活がすべてだというのは面白い発想だと思う。ありきたりな核戦争での終末ではなく、インフルエンザ兵器というのもめずらしい。しかし、それらの設定の奇抜さが物語りに活かされているかというと、微妙だ。現在と未来の世界を行ったり来たりする関係で、何か大きなインパクトがあるわけではない。精神のみの移動ということで、何も持ちこめない。そうなってくると、何か特別なアイデアで、崩壊しかけた未来の世界を救うのかと思いきや、意外なほどシンプルな方法で物語は収束していく。もう少し圧倒的な驚きがあってもよかったような気がした。未来に、現在の登場人物たちとシンクロするキャラが登場する意味も結局わからずじまいだ。
■ストーリー
悪性の脳腫瘍で、死を宣告された男が200年後の世界に意識だけスリップした。地表は殺人ウイルスが蔓延し、人々は高さ2キロメートルの塔に閉じこめられ、完璧な階層社会を形成している未来へ。
■感想
脳腫瘍で苦しんだある日、突然200年後の世界に精神が飛ばされる。丸っきり別世界となった未来で、男はどのような行動にでるのか。青の塔という高さ2キロにも及ぶ塔で人々は生活する。そんな未来の世界も、何が起きたかを考えると納得できるのかもしれない。未来を地獄に突き落とした原因が、ワクチンの存在しない強力なインフルエンザウィルスというのも目新しい。インフルエンザが、エボラウィルスやエイズなどよりも遥かに恐ろしいウィルスだということもよくわかった。地獄のような未来を救うため、男にできることは、現在にある新型ウィルスのワクチン作成に関わる情報を未来に持っていくということだった。
現在と未来を精神だけが行ったり来たりする。なぜそうなるのか、どのような原理でなんてのは一切説明されていないが、説明の必要はない。ただ、未来の世界に、現在の登場人物と似通った人物が次々と登場してくる理由は説明してほしかった。このことが物語りの大きな核となるような気がしたのだが、本作ではまったく触れられることなく終わっている。パラレルワールド的世界なのか、それともシンクロしているのか。現在において、新型ウィルスの研究をやめさせたことで未来が変わるのか、そこもはっきり言及はされていない。未来と現在の行き来にそれほど整合性や、重要性を見出していないような気がした。
未来を救う鍵となる、新型ウィルスの情報。それをどうやって未来に持ち込むのか。それが本作の一番のポイントなのだろう。誰もがあっと驚く仕掛けが待っているような気がしたが、思いのほかシンプルで単純な方法だった。まさか、結局この方法かというがっかり感はある。せっかく同じ場所で現在未来があるのだから、何か大きな工夫があるものと思っていた。悪性脳腫瘍がだんだんと小さくなった原因であったり、未来との繋がりであったり、それらの説明も結局ないまま終わっている。かすかに、男の子孫が未来に存在する理由は語られているが、多くの伏線が回収されずに放置されている。
SFとしての面白さをあまり感じることができなかった。
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