バンガー・シスターズ


 2010.9.2  ヤリマンコンビが大人になると 【バンガー・シスターズ】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
ヤリマン・シスターズが大人になったらどうなるのか。時代は変わり、成長した二人はまったく別の人生を歩んでいた。バーのカウンターガールとなったスゼットと、弁護士の妻となったヴィニー。対照的な二人が出会ったとき、過去の思い出がよみがえる。常識的に考えると、ヴィニーは弁護士の妻として良妻賢母を保つべきだったのだろう。日ごろの鬱憤が爆発したヴィニーの姿を見たとき、なぜかすっきりとして楽しい気分になった。スゼットの強引な性格と、ヴィニーがおどおどしながらも羽目を外す姿。人生に正解はないと思わせる場面かもしれない。スゼットとヴィニー以外にも脇を固めるキャラクターがこれまたすばらしい。脚本家のハリーやヴィニーの娘たち。まったく期待していなかっただけに、この面白さには驚いてしまった。

■ストーリー

60年代の終わり、最強グルーピー“バンガー(ヤリマン)・シスターズ”の異名をとり、その名をロック界に轟かせていたスゼットとヴィニー。あれから20年、時代は変わったが、未だにスゼットは、場末のライブハウスでカウンターガールとしてしがみついていた。しかし、若い男にフラれるは、借金は膨らむはで落ち目の日々。一方、ヴィニーはそんな“過去の栄光”を封印、リッチな弁護士のまじめな妻に収まっていた。借金苦のスゼットは金持ちヴィニーを頼りに、ボロ車を駆って彼女を訪ねてゆく。その途中で出会った潔癖症の中年男ハリーと一緒に。でも、家族に過去を隠していたヴィニーにとっては彼らは“招かれざる客”だった!

■感想
過去の栄光を引きずるように昔を貫くスゼット。新たな人生を切り開いたヴィニー。落ちぶれたスゼットがヴィニーに借金を頼みに行くシーンでは、スゼットの哀れさばかりが目に付いた。しかし、スゼットが惨めに見えたのはここまでだ。その後続く物語では、誰よりもスゼットが輝いて見えた。薬物でフラフラとなったヴィニーの娘を助け、落ち込んだハリーを元気づける。一方、幸せなはずのヴィニーは、娘たちに馬鹿にされ、地味な服装で良妻賢母を貫いている。この対照的な二人の対比が非常によくできていた。

スゼットとヴィニーだけでなく、脚本家のハリーの存在が物語をより面白くしている。家族がいるヴィニーと天涯孤独なスゼットではあまりに差がありすぎるため、ハリーの存在が必要だったのだろう。スゼットを支えるハリー。お互いが支えあい、卑屈な表情をしていたハリーがスゼットと出会い変わっていく様も見所かもしれない。はちゃめちゃなスゼットだが、人を元気にさせる力はある。もしかしたら、周りにとっては良い迷惑かもしれないが、スゼットのぶっ飛んだ行動は、人に大きなパワーを与えている。

ヴィニーが変わり始め、家族たちが戸惑い始める。これは当然のことだろう。娘や夫にとっては今までどおりのヴィニーがいいに違いない。しかし、ヴィニーはスゼットと出合ったことにより、昔を思い出し、抑圧された自分の思いを、思いっきり外にだすことになる。後先考えず、自分のやりたいようにやるという場面は、他人事とはいえ楽しくなる。それが安定した弁護士の妻という立場よりも、自分の思いそのままというのが、より人を引き付ける力があるのだろう。実際に自分の母親がそうなったとしたら、いい迷惑だが、楽しくなるのは確かだ。

予想以上に楽しめる作品だったので、驚いた。



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