バーン・アフター・リーディング


 2010.4.21  筋肉バカの面白さ 【バーン・アフター・リーディング】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
基本はシリアススパイ路線のようだが、結局は面白路線へと変貌してしまう。整形手術に命をかける女と、筋肉バカの男。不倫生活を続ける男女と、生きがいをなくしつつある元CIA諜報員。一つの勘違いをきっかけとして物語は異常な方向へと動いていく。出会い系に熱心なリンダと、自転車大好き、筋肉バカのチャド。この二人の勘違いっぷりと暴走で一気にコメディ化している。秘密のCDをロシア大使館に持ち込み大金をせしめようとする。しかし、実際には裏で大きな組織が動いていた…。個性的なキャラクターを惜しげもなく浪費し、ストーリーにスピード感をもたせている。まったく関係のない二人が奇妙な出会いから勝手な勘違いを繰り広げる。非常に練りこまれたストーリーだ。

■ストーリー

ワシントンのフィットネスセンターで働くチャドとリンダが更衣室で拾った1枚のCD-ROMには、CIAの機密情報が書き込まれていた。その頃、元CIA諜報員のオズボーンは、自分が機密情報を紛失したと知って狼狽し・・・。オズボーンの妻ケイティは、夫の危機に気づくこともなく、財務省連邦保安官ハリーと不倫生活を満喫中。さらにハリーは、出会い系サイトで意気投合したリンダとも関係を重ねていた。そんな5人が・・・。

■感想
CIAの機密情報がつまったCDを拾ったからといって、それをそのまま脅迫に使うというのがぶっ飛んでいる。オズボーンが言ったように、そこには大きなリスクが付きまとう。ある一つの勘違いから始まり、物語は勘違いの連鎖からとんでもないことになる。財務省の連邦保安官でありながら拳銃を抜いたことがないハリー。散々しつこいくらいに「拳銃を抜いたことがない」といいながら…。このあたりは脚本のすばらしさだろう。不倫相手から迫られ、妻に別れを切り出すタイミングを計りながら、相手が別れようとしていたと知るとショックを受ける。このハリーが面白さの元凶かもしれない。

ハリーが内面の面白さならば、外見そのまま面白いのがチャドだ。常にipodを手放さずノリノリで動き回る。筋肉モリモリだが、頭の弱い男。チャドの行動一つ一つが笑えてくるが、実はもっともかわいそうなキャラクターだとも言える。リンダの言いなりとなり、オズボーンを脅しながら、金をせしめようとする。リンダに悪意はないが、チャドにもさらに悪意がないために、相対的にリンダがなんだか悪者に見えてしまう。整形手術に燃えるリンダのなんだかわからない悲壮感漂う雰囲気も最後まで頭から離れなかった。

全てのキャラクターがどこか頭のネジが緩んでいる。裏で全てを知るCIAの幹部が呆れながら指示を出すのは、どうしようもなくバカバカしい事実からだろう。ハリーが勝手に妄想し、危機感から逃げ惑う。淡々と報告するCIAの諜報員が、冷静であればあるほど、事態のバカバカしさが際立ってくる。最終的には運動大好き、ランニングを欠かさない筋肉バカであるハリーとipod大好き筋肉バカのチャドはかなり近いのではないかと思えてきた。この二人がすべての面白さをかもし出している。

複雑に絡みあうキャラクターは、脚本のすばらしさによって活かされている。



おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
pakusaou*yahoo.co.jp