阿修羅ガール 舞城王太郎


2010.12.1  ぶっ飛んだ少女の内面 【阿修羅ガール】

                     
■ヒトコト感想
アイコは現代風な少女ではあるが、中身はぶっ飛んでいる。アイコの内面が作者の文体によりリアルに迫ってくるが、アイコの内にある奇妙な世界にどれだけついていけるか。少女的な悩みであっても、異質なものを感じずにはいられない。にもかかわらず、アイコの行動と思考に惹かれてしまう。憧れの人に恋焦がれる少女ではすまされないアイコの内面。グルグル魔人にアルマゲドンととんでもない世界の中で、アイコが体験した世界とはどんなものなのか。オチはないが、アイコの物語を楽しく読むことができた。アイコの内面を表現した森の話や、グルグル魔人との繋がりなど理解しがたい部分はあるが、それでもアイコの何かが吹っ切れた行動には楽しさがある。めちゃくちゃな物語だが、前向きな印象ばかりが残る奇妙な作品だ。

■ストーリー

アイコは金田陽治への想いを抱えて少女的に悩んでいた。その間に街はカオスの大車輪!グルグル魔人は暴走してるし、同級生は誘拐されてるし、子供たちはアルマゲドンを始めてるし。世界は、そして私の恋はどうなっちゃうんだろう?東京と魔界を彷徨いながら、アイコが見つけたものとは―。

■感想
好きな人はいるが、好きでもない人とやって後悔するアイコ。等身大のどこにでもいる普通の女子高生かと思いきや、内面はとんでもないことになっている。妄想なのか、現実なのか。アイコが経験した出来事とアイコの内面を映し出した物語には強烈なインパクトがある。陽冶への少女らしい気持ちの高ぶりをみせたかと思うと、次の場面ではめちゃくちゃなことを考えている。この破天荒な少女と周りで起こる奇妙な出来事を読んでいるとまったく飽きない。そればかりか先が気になって仕方がない。

アイコの内面をあらわしているであろう森での出来事。恐怖を通り越して気持ち悪さばかりが残ったが、読み終えてみると、それもアイコなのだと納得できた。グルグル魔人の描写にしても、作者お得意の引きこもりニートを描いたようで、非常にリアリティがありそうでない。よくわからないが、ステレオタイプなニートを強調しているような気がした。それらの描写があり、最後はアイコに行き着くのだが、そこにどういった繋がりがあるのかはよくわからなかった。

オチは特にない。誘拐された同級生がどうなったかも描かれていない。それなりに暗示されてはいるが、結論はない。とんでもない事件に巻き込まれながら、へこたれないアイコの考え方をひたすら読まされると、根拠のない前向きな自信がわいてくるから不思議だ。何年も思いを寄せた人からあっさりとフラレたとしても、同級生に頭をカナヅチで殴られたとしても、へんに元気なアイコ。アイコの心の叫びを読んでいると笑える場面ではないはずなのに、思わず笑いがこみ上げてくる。不思議な読後感だ。

オチがないことに不満を感じるかもしれないが、楽しめる作品だ。




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