あるいは裏切りという名の犬


 2010.5.12  いったいどこまでが実話なのか 【あるいは裏切りという名の犬】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
ラストで実話とわかった。いったいどのあたりが実話なのか気になるところだが、功を焦った人物の裏切りという部分なのだろうか。一方的なライバル心で相手の邪魔をするドニ。事件を解決することだけに力を注ぐレオ。対照的な二人で、描かれ方もレオびいきになっている。本作の描き方であれば一方的にドニが悪いように見えてしまうが、事実はどうだったのだろうか。映画としての面白さを追求するためには、部下に慕われるレオが邪魔をされるというのが良いのだろう。ただ、ドニの力も見落とすことはできない。どこまでが真実でどのあたりが脚色なのか。中盤まではドニの憎たらしさとレオの物悲しさばかりが目立つが、ラストの展開で一気にドニへの同情心がわいてきた

■ストーリー

パリ警視庁のふたりの警視、正義感あふれるレオと野心家のドニ。かつてひとりの女性を取り合い、彼女がレオ夫人となったことから、友人だったふたりの間には深い溝ができた。次期長官候補がレオであることがおもしろくないドニ。どうしても出世したいドニは、レオが指揮をとる現金強奪事件の捜査に無理やり入ってくる。そんなとき情報屋に騙され、殺しのアリバイの片棒を担がされたレオ。やがてその一件は、ドニに勘づかれ、彼の人生を左右する事態に発展していく。

■感想
レオとドニ。二人のライバル関係は曖昧で、どう考えてもレオの方が優秀なように見えてしまう。ただ、レオの運命が大きく変わる事件に関してはレオに問題がある。その結果、ドニが出世しレオは容疑者となる。特別おかしなことではないが、レオの正義感あふれる行動と、周りの荒くれ者たちがレオに心酔しているということで、レオの全ての人格がすばらしいように見えてくる。一方ドニは部下に対してもそれほど信頼されているわけでもなく、都合の悪いことはかん口令をしく。YESマンだけを出世させる。典型的な悪い上司だ。

レオとドニの関係が悪化した理由も描かれている。結局本作は外部的な要因よりも、内部の争いを描いた作品ということだ。強力な武器を持った現金強奪事件の犯人たちも良い味を出していたと思うが、彼らはほとんど重要視されていない。ドニが出世することは部下たちの出世にも繋がる。一方レオが情報屋に騙され、刑務所に入れられるということは部下にも大きな影響を与えることになる。ドニとレオ、実話としてどちらが本当に存在したのか。

ラストの展開は、なんとなくドニを擁護しているように思えた。実話としてドニのモデルが実在するのであれば、このような描き方をするしかないのだろう。権力構造を上りつめたドニの行き着く先はあまりにも哀れすぎる。対してレオの方は、最後にドニを仕留めるチャンスがありながら、手を下さなかった理由が曖昧でならない。ドニの言葉だけを信じたのか、それとも娘との今後の生活を考えての行動だろうか。ドニのその後を新聞で見たレオの想いはどうだったのか。ラストの表情から伺い知ることはできない。

実話というのが強烈なインパクトを残している。



おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
pakusaou*yahoo.co.jp